No.235
『しまなみ海道 一島一食!』
さて、今週も【弾き語りばったり #11】のツアー先で何を食べたのか、ですが、今回は11月1日(日)松山から広島へ移動する過酷な一日について書きます。先に言っておきますと、そうです、大方の予想どおりただラーメン食ってるだけっちゃだけですけど、今回は『しまなみ海道 一島一食!』というかなり過酷な企画です。では、どうぞ。
松山公演終了翌日の11月1日(日)、次なる公演地・広島はキャンディープロモーションの管轄なので、DUKEの岡野くんとは昨晩に別れを告げ、クールビズ・近藤くんと二人でレンタカーに乗って愛媛県今治市から瀬戸内海の6つの島にかかる7つの橋を渡って本州・広島県は尾道につながる西瀬戸自動車道=通称“しまなみ海道”を通って広島を目指します。二人での移動ですから『横手やきそば3本勝負』(コラムNo.231)のようなゲーム性はつくりにくかったので、この6つの島にいちいち降りて、それぞれの島でなんらかのものを食べるという“一島一食”という、どう考えても無理な企画をとりあえず打ち立てたのです。
まずはひとつ目の島“大島”です。インターネットで調べると【村上かまぼこ店】の“じゃこ天”が旨い、と多くのっていたので、まずはオードブルがわりに“じゃこ天”をということになりました。昨夜、岡野くんが「松山南から高速にのるより、海沿いを今治まで行くほうがいいですよ」というので、そのとおりに走りましたが、今治までは45kmと思っていたより長めの道程でした。讃岐地方ではないものの、道中に“うどん”の看板が複数目に入り、それに触発された近藤くんが「四国に来てうどん食べないってのもどうなんですかねぇ」と言い出し、「うん、たしかに四国2県に滞在しながらうどん食べないってのはちょっとあれだよなぁ」と私も思ってしまい、もう11時半を過ぎてはいるものの、とりあえず朝食という解釈でうどん食っとこうということになりました。と決めて以降は、さっきまでいくつもあった“うどん”の看板がなかなか登場せず、「もし、今治の高速の入口までうどん屋がなかったらうどんはなしね」と言った数分後に、なんとも風情のあるうどん店を発見し、「あったぁ!」と急停車。お父さんとお母さん二人でやっている、ばりばり地場系のうどん店【たぬき】。私は何ものってない“うどん”を、近藤くんは“きつねうどん”を注文。あっさりした上品なお出汁に、かっちりコシのある手打ちうどんは期待どおりのおいしさです。近藤くんはさらっと完食。私も軽く完食できるところですが、「これ食っちゃうとこのあと2時間はなんも食えんよ」という気持ちになり、いやしかし、茶髪のバイトくんがノリノリでやってるようなチェーン店ならまだしも、寡黙なお父さんが丁寧に作るうどんを残すってのは、ちょっと気がひけるよなぁ、と思いながらも、いや、やはり次の展開を考えて、申し訳ないけど2割ほど残して店を出ました。しかし、たいへんおいしゅうございました。
今治市菊間の【たぬき】の |
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うどんを |
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凄い勢いで食らう近藤くん |
いよいよ今治ICから西瀬戸自動車道=通称“しまなみ海道”にのり、瀬戸内海を渡ります。ひとつ目の島“大島”の大島南ICにはほんの10分もかからず着きました。カーナビの言おうとおりに10分ほど走って【かまぼこの村上】に到着のは12時45分でした。店頭でいろんなもんを揚げていて、その揚げたてアツアツをハホハホ言いながら食べる、というイメージだったんですが、そうではなさそうです。とにかく店に入って「なんかちょろっと食べたいんですけど」と言うと、明るく感じのいい女性が、かまぼこや天ぷらやらいろんな種類のすでにパックされた練りもの商品を出して丁寧に説明してくれました。さっきのうどんから30分も経ってないもんですから、とりあえず“じゃこ天”を買い、しかし、それだけじゃなんか悪いと思った近藤くんは“たこの天ぷら”も買いました。店の前で“じゃこ天”をペロッと食って、たいへんおいしゅうございました。再び車に乗って次なる“伯方島”へ向かいます。
大島北ICから高速にのって大島伯方島大橋を渡り、これまたほんの10分で伯方島ICを降ります。“伯方の塩”で有名なここ伯方島には“伯方の塩ラーメン”を出す【さんわ】という店があるらしく、ナビどおりに10分ほど走って到着したのは13時15分。さっきの大島ではあまり人を見かけませんでしたが、ここ【さんわ】は結構なにぎわいです。しかも従業員はみな若いお嬢さんばかりです。近藤くんは“伯方の塩ラーメン”を注文。私もそうするつもりでしたが、“汁なし伯方の塩ラーメン”というのが目に入ってしまい、それはなにかと店員さんに聞くと、特製の“伯方の塩だれ”で和えた汁なしラーメンだと言うので、うぅぅぅ、どうしょっかなぁ、どうちよっかなぁ、と迷ったあげく、写真的なバリエーションも考慮して、勝負!、“汁なしラーメン”を注文しました。近藤くんの“伯方の塩ラーメン”は予想どおりにあっさりさらっとした見た目で、ほんの1時間前にきつねうどん、ついさっき“じゃこ天”を食べたとは思えぬテンポでするっと完食。私のほうはというと、キャベツやもやしなどの野菜類が予想外に多い見た目でややダメージを受け、こういうのは勢いだと一気にかきこもうとしましたが、もとが小食の私は食べ始めの時点でとっくに容量オーバーですから、中盤で勢いも止まり、結局ここでも2割ほど残してしまいました。やっぱりひねらず“伯方の塩ラーメン”にしとくべきだったか。いやしかし、おいしいと言われるものを食べに行って予想どおりにおいしい、ということにやや飽きが来ているソフト変態の私にとって“汁なし”は、ある意味・逆に・ある反面、有意義な選択だったのかもしれません。
伯方島【さんわ】の伯方の塩ラーメン |
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汁なし伯方の塩ラーメン |
お会計をして【さんわ】を出ようとしたら、あらららら、外はどしゃぶりです。近藤くんが車までダッシュして店の前につけ、私はシャッと乗り込みましたが、たいへんな勢いの雨です。この日昼過ぎから天気が崩れることは、前日の予報で知ってはいたんですが、こんなにマジで降るとはね。ということでコンビニらしき風情の店でビニール傘を買って、さぁどうするよ。“一島一食!”なんてやってたら、車乗り降りするだけでいちいちびしょ濡れですよ、みたいな雨なもんですから、今日は移動日であるにしろ明日は広島公演ですから、こんなんで風邪でもひいたらシャレにならんすよ、ということで「よし、やめよう」と決定。こうして『しまなみ海道 一島一食!』は2島目であっさり雨天コールドとなりました。実際二人ともお腹いっっっっっぱいですし、これでよかったんですよ、逆に。だって私が6食も食えるわけないんですから。ホントのとこは、じゃこ天クラスの軽いものを挟みながら、私はなんだかんだと理屈をこねてスルーしながら、結果的に近藤くんだけが全6島食破できればおもしろいなぁ、と思っていたのです。
激しい雨の中 |
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いくつもの橋を渡って |
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大浜PAで意味なし休憩 |
ということで、再び西瀬戸自動車道にのって大三島→生口島→と通過、でもこのままスルーっと本州上陸ってのもあまりに悲しいよね、ということで14時15分、大浜パーキングエリアで意味無し休憩。ここのレストランのメニューはすごかった。“たこ天うどん”“たこ飯”“たこ天丼”に“たこ天カレー”とたこ絡みメニューのオンパレード。タコめしとタコ天うどんの“たこたこセット”なんてのもありました。もちろんなんも食べませんでしたけど。でもって因島→向島とスルーして、尾道大橋を渡って本州上陸、尾道に入ります。
尾道と言えば“尾道ラーメン”。いやしかし、この満腹状態でさらにラーメンってのはいくらなんでも無理だ。思えば、最初の今治での“うどん”がいらなかったんだよ。私が“しまなみ海道”に入る前のうどんになぜ賛同したかは、前々日の高知、そして前日昼の引地橋のドライブインからつながった話でして(コラムNo.234)。高知に行くと必ず立ち寄るおいしいうどん屋さんがあるですが、今回はワンチャンスの昼食に噂の“鍋焼きラーメン”を選択したので、うどんは食べませんでした。そして翌日の引地橋のドライブインでの他人丼も里芋のおでんもたいへんにおいしかったんですよ。しかし私はそれらを食べながら「いや待てよ、ここは他人丼ではなく、やはり“うどん”を食べるべきではないか、だってここは四国なんだぞ」と思っていたのです。そんな感じで頭の後ろのほうにうどんが2〜3本ひっかかってたもんですから、この日午前中の「四国なんだからうどんの1杯くらいは」という近藤くんの提案にあっさり賛同してしまったのです。あれさえなければ、がんばって尾道ラーメンを食べれたんだよなぁ。
そんな私が尾道を訪れたのはデビューした87年の夏、大林宣彦監督にお誘いいただいた仕事に絡んでの『尾道大連友港博覧会』での野外ライブ。あれ以来22年ぶりの尾道だと言うのに、素通りするのは礼儀に反するんじゃないか。という思いから「やっぱ、尾道で尾道ラーメン食べとくべきじゃないの(オレは食わんけどね)」と近藤くんに一応ふってみると、意外にも「やっぱそうですかねぇ、ぼくもやっぱ食べといたほうがいいんじゃないかって思ってたんですよ」ってことでしたので、「よし、じゃぁ尾道行って尾道ラーメン食おう!(オレは食わんけどね)」ということで、高速を降りて尾道の街にやってきました。
尾道ラーメンについては下調べをしてなかったので情報はなく、とりあえず街中を回って様子を見ようということになり、繁華街らしきところをぐるぐる走っていると、ありますあります尾道ラーメン店。もう14時半を過ぎているというのに多くの店に行列ができています。そんなんを見ているうちに「やっぱりオレも食っとくか」という気分になってきました。今から並ぶのはいやだということで、並んでない店を数軒チェックして、最後は駐車場に車を停めて長いアーケード街を歩いてラーメン店をチェックしたあげくの15時15分、最終的にここでいいかと決定したお店は土堂2丁目の【伝でん】。けっこう奥行きのある店内に先客は家族づれがひと組のみ。カウンター席についてラーメンを注文しました。お店の雰囲気から特に何も期待はしてなかったんですが、これが意外と旨かった。中細平打ち麺のつるつるシコシコした食感はありそでなさそなりそな銀行、動物系と魚介系がきれいにまとまった醤油スープは予想していたより脂も少なくさわやかにほんのり甘く、もうなんも食べれんはずだった私がなんと完食してしまいました。たいへんおいしゅうございました。
いやぁぁぁ、しかし、食った。12時前から15時半までの間にうどん8割・じゃこ天1枚・汁なしラーメン8割に尾道ラーメン1杯。私の場合、約3時間半でこの量はどう考えても自己新記録です。おかげでまた少し頭がバカになりました。で、近藤くんはこれらをすべて完食してるわけですから、食いキャラにもかなり箔がついたというものです。しかし今回はズボンの股は裂けませんでした。当初の企画“一島一食!”は雨天コールドになったものの、思い出に残るしまなみ海道の1日でした。再び、車に乗り広島に向かって雨の中央自動車道を激走しました。
さて、そんな私はあちこちでラーメン食ってるだけじゃんと見せかけて、いよいよ新作アルバムのレコーディングに突入しました。ここから12月いっぱいは、極めてビジーでタイトでクリエイティヴな日々が続きます。実際今もレコーディングスタジオでトラックダウンを待つ間にこうしてボーカルブースで原稿をカキカキしている私ですが、この先しばらくは『金曜コラム』執筆に費やす時間が激減する=つまり、かなりあっさりした内容が続くと思いますが、すべてのエネルギーを次なる作品につぎこんでいるのだろう、といい風に解釈してください。必ずや皆さまがグッとのけぞって、ついでに椅子から転げ落ちるような素晴らしい作品にするべく頭をこねくり回していますので、楽しみにしておいてください。
2009/11/13
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