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Friday Column

No.173

『電車に乗った日のこと』

日常の交通手段はほとんどが自慢の高級北欧車な私ですが、時と場合によっては電車にだって乗ったりもします。その多くは、ひと駅となりの街に食事に行く時、また、飲み会があるときなどです。9月3日(水)は、11月にリリース予定の『弾き語りばったり7のLIVE CD』の打ち合せがあり、その後そのまま打ち合せと称した打ち合せという名の飲み会になだれこむってことで、“飲んだら乗るな、乗るなら飲むな、飲むんだったらトコトン飲もう”というモラルにのっとり、会社まで電車で行くことにしました。

夕方の打ち合せの前にやることもいろいろとあり、また札幌でのイベントライブのための個人練習も充分しておかなければということで朝9時に家を出ます。駅までは徒歩でほんの5分足らずですが、高級ブック型コンピューターの入ったカバンに歌詞カードの束が入った紙袋と、車で移動する普段は気に留めない程度の荷物も、持って歩くと結構重たいもんですね。残暑ぶり返しの東京はすでに30度近くに達し、駅に着くまでにアンダーシャツは汗でジットリ。多くの都市生活者はこれを毎日繰り返しているのだと思うと、それだけで尊敬していまいます。

9時過ぎの都心に向かう電車はまだまだぶりぶり満員で、両手に荷物を持った私はグッドポジション・グッドスタンスの確保にちょっと苦労します。思えば私はラッシュアワーに電車に乗る生活を送ったことがありません。唯一あるとすると、大学時代の84〜86年、銀座のレストランでアルバイトをしていた時代。23時に閉店してなんやかんや片付けて、地下鉄丸ノ内線の最終電車で、私と同じ“新中野”に住むバイトの先輩・堀田一郎さんとその弟・伸一くんと一緒に帰ります。銀座駅のホームに入ってくる最終電車はほぼガラガラですが、ここ銀座で人がぶりぶり乗り込んで一気に満員状態になるので、うまいこと席に座れるかどうかは、開扉時に瞬時に判断し無駄なく動けるかどうかが明暗を分けます。そんなある日、一郎さんが「ってことは、ひとつ前の東京駅から乗ればいいんだよ」ということに気づき、試しに数分前の逆方向で東京駅に戻って、そこから新中野方面の最終に乗ってみると、ラクショーで座れて銀座でブヮァ〜っと乗り込んでくる仕事終わりのホステスさんを余裕で観察できました。これはいいこと考えたってことで、これを“東京作戦”と名付けました。

話戻って9月3日(水)の朝。混んでない時間帯であれば、元鉄道マニアの私は必ず最後尾の窓に張り付き、走る電車の後方の線路上にシューッと流れる景色を楽しみ、時々速度計を見たり、車掌さんの動きを観察したりするんですが、さっき書いたようにまだ9時過ぎの今回は最後尾でもギューギュー満員だったもんですから、後方窓のポジションは取れず、まわりは頭・顔・背中。両手に荷物を持ったまま吊り革にもつかまれず立っているのがやっとです。

いやぁ、それにしても満員電車って凄い空間ですよね。だってそうでしょう。目の前には汗ばんだブラウスにうっすら透ける何の変哲もないブラ線。と思えばあっちには夏にまかせた胸の谷間。満員電車に慣れない私にとってそれはもう極めてリアルなエロスのカオスです。この期におよんで繊細で敏感で感受性が強く、爆発的な想像力の持ち主である私にとって、この状況を何食わぬ顔でやり過ごさなければならないことは、ある意味・逆に・ある反面、たいへんな苦痛です。あぁぁぁ、早く降りたい、降ろしてくれ、ってことで会社の最寄り駅・赤羽橋の少し手前の乗換駅で下車し、地上でタクシーに乗りました。毎日あのエロスのカオスの中で平常心を保ち続ける多くの紳士を尊敬せずにはいられません。

会社のスタジオに入り、ひとり個人練習に没頭することで、イマジネーション・フルでメーター振り切っちゃった脳みそをなんとか冷やし、お昼は、もうあんなに混んでることはないだろうと再び地下鉄に乗って隣駅・大門までひと駅だけ乗ってつけ麺を食べました。再び会社に戻る大門駅。パッと見オーストラリア人と思われる3人家族のデッカイお父さんよりもっとデッカイお母さんが声をかけてきました。「Do you speak English ?」「あ、あぁ、just a little」、ってことで乗るべき路線を尋ねられます。「エイザクーザ」と聞こえた目的地が「浅草」だと理解するには3秒くらいかかりました。道案内程度の英語はできるもの、普段電車には乗らない私ですし、しかも今日初めて来た大門駅なもんですから、真剣に案内板を見て浅草線の浅草方面行きをなんとか確認し、「You have to take the Asakusa Line, platform No.2. Go up this way」とエスカレーターを示すと、「Oh, thank you very much」ってことでエスカレーターを上って行きました。日本人であるにもかかわらずパリの街中で観光外国人に道を尋ねられたことは2年半の間に何度もありましたが、思えば日本で外国人に道を尋ねられたのは40数年の人生で初めてのことかもしれません。そう思うと後から妙に責任を感じてきて、「本当にplatfom No.2であってたんだろうな」とか、「Asakusaの前の theは“ザ”ではなくちゃんと“ジ”って発音したかな」とか、「ってゆうか、ああいう場合 You have to って言い方はおかしいよな」なんてことをいろいろ考えながら赤羽橋に戻る地下鉄に乗りました。ま、それが間違ってたとしてももう後の祭り=Late Festival、迷ってこそ旅行なんですから、それでいいのです。

そんな感じで夕方は『ばったり7 LIVE CD』の打ち合せをやるフリをして、そのままの流れで打ち合せと称した打ち合せという名の飲み会になだれ込み、結局タイトルすら決まらず、来週に持ち越すことになりました。

さ、今週もなんの脈拍もなく、ただ書かずにはいられなかったことを書いたのみでこれまた逃げるようにお開き。あぁぁぁ、なんやかんやとやることがあることはわかっていたものの8月をのんびり過ごしすぎたシワヨセで気がつきゃ9月はもうじぇんじぇん時間がありません。ここから先の『金曜コラム』もしばらくはこんな状態が続くことでしょう。それでもゴルフはやるけどね。とにかく明日6日(土)はイメージ出身地・札幌の芸術の森で『一本の樹 スペシャルライブ』です。着よう着ようと温めておいたレアなアレを着て登場します、お楽しみに。

2008/09/05



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