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Friday Column

No.098

『ワイングラスを買ったのさ』

すごく久しぶりにワイングラスを買いました。というのはすごく久しぶりにワイングラスを割ってしまったからです。

私はワインが大好きなもんですから、当然グラスもブルゴーニュ・ボルドー・シャルドネ、それにシャンパーニュと地方や品種に合わせて4タイプを使い分けています。それぞれちゃんと理にかなった形というか、その土地土地での長い歴史を経て形成されたフォルムだったりするもんですから、やはりその地方の品種を飲む場合はそれを飲むべきフォルムのグラスで飲むのが当たり前においしいわけで、とりあえずワイングラスだったらなんでもいい、というわけではありません。

あまり興味のない方には、こだわりワインおやじのウンチクのように聞こえるかもしれませんが、そんなことないんですよ。たとえば、居酒屋さんに行って、まずは生ビールをグビビビビ〜ッとやろうと思ったら、たまたまちょっとシャレ過ぎた店で、なんだか黒い陶器のコップで生ビール出てきちゃって、美しい黄金色を眺めることもできずに飲んでみたところで、うぅぅん、そうじゃないんだよなぁ・・ってなることってあるじゃないですか。ちょっとわかりにくいですかねぇ。じゃぁ、すっごく極端なことを言いますと“ラーメン用のどんぶりで天ぷらうどんを食べる違和感”を想像していただければハッキリするでしょうか。とにかく、ブルゴーニュのワインはブルゴーニュのグラスで、ボルドーのワインはボルドーのグラスで飲むのがどう考えてもそのおいしさを最も楽しめるのは明らかなわけで、シャンパーニュなんかもう絶対に譲れるものではありません。

ちなみにシャンパングラスというと、大きく分けて縦長のフルートタイプと、丸く広がった浅いタイプのものがありますが、縦長型は本場フランス・シャンパーニュのもので、丸浅型はアメリカのもの。なにが違うかというと、自然発泡酒であるシャンパーニュのあの泡がキラキラ静かに立ちのぼるのをゆっくり楽しみながら飲むべく、気が抜けるのを長引かせるための形がフランス式縦長フルートタイプで、それに対しアメリカ式丸浅型は、シャンパンの液体が外気に触れる面積を多くとることによって発泡を促進させる、つまり早く気を抜くための形なのです。シャンパーニュの大きな魅力のひとつである“泡”をなぜさっさと抜いてしまうのかというと、これは社交パーティに於いての御婦人方のゲップ率を少しでも軽減しようという意図からくるもので、アメリカに於けるシャンパーニュはあくまでセレブ感あふれるパーティ向けの高級ドリンクという位置づけで、その本来の魅力は二の次なのでしょう。よくゴージャスなパーティで何十ものグラスをピラミッド方式で高く積み上げて上からチャラチャラチャラチャラ注いで大騒ぎする“シャンパンタワー”なんてのがありますが、あれこそなんでもかんでもエンターテインメントにしてしまおうという悲しみに満ちたアメリカ式パフォーマンスの空虚な象徴であり、私に言わせりゃ“ボジョレヌーボー風呂”に匹敵する礼儀知らずな行為です。

ま、心弾むアメリカ批判はこのくらいにしてですね、今回割れちゃったのは『Chablis/シャブリ』なんかで有名なシャルドネ種などの白ワインを飲むためのグラス。グラス割るなんてことは10年に一回あるかないかですが、洗ってる時にふと別のグラスに当たっちゃったんでしょうね、アートな曲線がピキッと入りましてね。やや小ぶりの玉葱型の美しいフォルムが好きで10数年使っていたもんですから、非常に残念でした。

でもって買ってきたのが【RIEDEL】社のシャルドネ用、今回は玉葱型ではなく卵形のものにしました、なんとなく。思えばイタリアのキャンティ・クラシコを飲む用のグラスも持ってなかったんで、それもついでに買ってきました。かれこれいろんなグラスを使いましたが今のところ【RIEDEL】社がベストですね。持った時のバランスが心地よく、極薄で口当たりも上品。それから洗った後の水切れがたいへんに良い、これ非常に重要なんです。うちは脚付きグラスを逆さにつるして干すホルダーを東急ハンズで買ってきてキッチンに設置してまして、水切れの良い【RIEDEL】は、夜飲んだ後洗って吊るしておけば翌朝には完乾してますんで、フキンで拭く必要がなく、グラスに細かい繊維が付着することもないため、いつでも高級レストランのように綺麗なグラスでワインが飲める、というわけです。

さて、買ってきたワイングラスの撮影ですが、これが難しいんです。いわゆる“写り込み”ってのがありまして、自宅撮影の場合、夜間は電灯や電気スタンド、昼間は窓からの自然光が“照明”がわりなんですが、ワイングラスを撮ろうとすると曲面体なもんですか、どこに置いてどっちから撮ろうとしてもどうしても電気や窓が写り込んじゃって、またこれが妙に目立つんです。言ってみりゃグラス自体が逆魚眼レンズみたいなもんですから、それ以外のものもガンガン写り込み、へたすりゃ部屋の中に干してる洗濯物まで写っちゃったりして、素敵なワイングラスでオシャレなライフスタイルのイメージを醸し出そうとする意図とは真反対に、なんだかふつ〜の生活感がブリバレしちゃったりしたりする恐れもあるってことで、屋外撮影に変更しました。しかしこれもこれで結構むずかしいんですね。なんつたってモノが透明ですから、ある程度の存在感を出すにはそれなりの試行錯誤が必要でした。



というわけで、これが今回のベストショット、近所の公園でワインの木箱を台にして撮影しました。同じグラスみたいに写ってますが、手前がシャルドネ用で右奥がキャンティ・クラシコ用、その違いがどのように味に影響するのかまでは私はわかりませんが、幅と長さが微妙に違います。左奥は花見にやってきた人だと思いますが、いや、ただの散歩なのかもしれません。しかし赤いバッグを二つも両脇にかかえていることから推測すると、中身はお弁当や水筒やビニールシート、おやつやバナナも入っているかもしれません。時期的にもやはり花見だと考えるのが妥当です、その証拠にこの公園には桜の木が数本あります。しかし残念ながらこの時はまだ五分咲きでした。

という変な終わり方で今回はおしまい。今日は『弾き語りばったり #5』仙台公演、そのあと名古屋・新潟と続きます、よろしくどうぞ。

2007/03/30

※今回に限らずこの『金曜コラム』には、私が独自に考え出した私説が専門的知識のような風情で書かれていることがしばしばあります。


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