No.089
『 W 』
もっとも尊敬すべき大先輩Chage & Askaさんの新作アルバム『DOUBLE(W)』が1月24日に発売されました。今回はこのアルバムをより多くの皆さんに聴いていただきたいと思っての金曜コラムです。だってChage & Askaさんくらいキャリアが長く誰でもその名を認知している存在になると、どこかでたまたま流れたシングル曲をちらっと聴いただけで「今回のチャゲアス、いいよね〜」とかその逆とかをなんとなく言っちゃったり、ヘタすりゃ語ったっちゃったりするでしょう。それはそれでいいんですよ、世の中なんてそんなもんでしょうし。でもね、やっぱアルバムをちゃんと聴いてほしい、というのがアーティストとして当然の感覚であるもんですから、この金コラをお読みいただいているハイセンスな皆さまには「そのアルバムはちゃんと聴いとかんといかんばい」と思っていただくというのが後輩としての勝手な使命であったり駿河湾。
で、その先輩・後輩ってのはなにかというと、単純に福岡出身ってことなんですけど。他の都道府県出身のアーティスト同士だとどうなのかってことは今回の人生では経験していないのでわかりませんが、福岡出身者同士というのはなにか特別なホームタウンスピリットというか、そんなもんを感じます。そんな私とChage & Askaさんとの関わりを出会いから書きだしますと、私が生まれる直前まで私の家族が住んでいた団地にChageさんは住んでいた、とか、Askaさんには小学校低学年の頃、一緒に遊んでもらったことがあるらしい、なんてとこまで遡ってしまうという長さになりそうなので今回はキャッツアイ、その辺は確実な情報が揃った上でいつかお話しする機会があったらいいなぁということにして、今回の新作アルバムの話。
去年12月の半ば、都内のあるラジオ番組収録スタジオで偶然ばったり久しぶりにお会いした時に、新作のサンプル盤をいただいた直後、車で聴きました。大好きなアーティストの新作を聴くのはすごくうれしいことで、また妙に緊張したりもします。スティービー・ワンダーさんの10年ぶりの新作『A Time To Love』を初めて聴いたときのような「やった〜!オレが待っていたのはこういうのだったんだよなぁ〜」という即感的なのとはちょっと違い、「うぅん、うぅぅん、うぅぅぅん」と繰り返し聴くたびにだんだんだんだんその内容の確実な分厚さを確認してだんだんだんだんうれしくなってくる、といった感触でした。これはどうしても『KANのロックボンソワ』で特集するべきだ、そのために是非直接話を聞きたい、ってことで先週、都内のスタジオにお二人に来ていただきインタビューを録りました。
そこでの話の記憶も含めて、アルバム『DOUBLE(W)』の私なりの短い解説です。
異なるメロディを持つ幾つもの音色に取り囲まれてAskaさんの歌がうねる『パパラッチはどっち』。Chageさんの言葉を借りると「Askaという絵の具を使ったアレンジャー澤近の芸術作品」。/ベッタリと貼り付くような“タメ”がかっこいいマイナーコーディッドロック『Westing Time』。この“タメ”が若いヤツには出せないんですよ。/このアルバムの中でたぶん最も少ない音数で編曲構成された楽曲『地球生まれの宇宙人』。すべての音色が確実な存在意義を持ち最低限の力でツボだけを押さえ歌を聴かせるアレンジメントは秀逸。/Chageさんらしい楽し〜い楽曲でありながら、実はかなり手のこんだメロディ構成の『ボクラのカケラ』。ラ−ラ−ラ−ラ−ララ−ラララ−/先行発売シングルのひとつ『Here & There』は2年前それぞれのソロ活動時代、Chageさんが映画作りの最中に作り始めた曲らしい。/04年夏のシンング盤とは全く違う南米方向からのアプローチで姿を変えた『36度線 –1995夏-』。/04年冬のシングル発売以来“こんな曲を作りてぇ”と繰り返し聴いている、現段階このアルバムで私が最も好きなナンバー『僕はMusic』。/04年以降、ライブで繰り返し演奏することにより無駄がそぎ落とされたという『光の羅針盤』Album version。羅針盤と書いて“コンパス”と読むが、作者であるChageさんはそれを“パスンコ”と言っていた。/聖堂的音響のきいたコーラスから後半にむけて弦楽・管楽の交響ものヘと展開する壮大な編曲がなされた『crossroad』もまた、04年冬のシングル盤とは大きくその印象を変えた。/先行発売シングルのひとつ『Man & Woman』は、91年「はじまりはいつも雨」を聴いて初めて日本語の曲が心の奥底に滑り込んできた感覚を私に少し思い出させました。
5年ぶり10曲入りのこのアルバム『W』、前半にも書きましたが“分厚い”という表現が今んとこしっくり来てます。うん、まぁ、文字にすればこんな感じですが、やはり私の文章じゃ表現が平たいですね。ともあれ「そういう意味ではチャゲアスのアルバムってちゃんとは聴いたことないかもしれんね」という貴方にこそ是非聴いていただきたい1枚です。
じぇんじぇん関係ないんですけど『W』という文字、英語では「u/ユー」がふたつで「double u/ダブル ユー=W」なんですが、これがラテン系のフランス・イタリア・スペイン語になると「u/ユー」がふたつではなく「v/ヴィ」がふたつで、仏伊西それぞれ「double v/ドゥブル ヴェ」「doppio v/ドッピオ ヴ」「v doble/ウヴェ ドブレ」=「W」です。仏・伊・西いずれの言語に於いてもこの「W」は元来アルファベット構成文字ではない後発文字で、外来語にしか使用されません。でもってドイツ語になると「u/v/w」は「ウ−/ファウ/ヴェ−」。「W」がどちらの2倍なのかは発音からは読み取れません。ちなみにロシア語には「W」は存在しません。
さぁ、例によって意味もなくウンチクでケムに巻いたところで今週はここまで。まぁでもウンチでぐるぐる巻きにされるよりはマシだと思いながら爽やかにまた来週。
2007/01/26
|