No.080
『ワインノート』
札幌はもう雪です。さて、ボジョレー・ヌーヴォが解禁になりましたが、もうお飲みになりましたか。今年の私はなんやかんやと機会があり、もうすでに4種類飲みました。今週の月曜日はパリ時代の友人でワイン輸入の仕事をしている五十嵐祐介氏のさそいで2本飲み比べ大会をやりました。そのうちのひとつ『Beaujolais Village Nouveau Selection du Château Labouré-Roi』は、これまで私が抱いていた“ペラッとしててお酒っぽい”というヌーヴォのイメージを一新する深く丸みのある素晴らしいものでした。専門家の話を聞きながら選ばれたワインを飲むのは勉強になります。しかし予定通りにほいほい酔っぱらって、いろいろ教えてもらったこともちゃんと覚えてないんで、ボジョレー・ヌーヴォに関するちゃんとした話は、五十嵐くんが執筆しているページを後で紹介しますので、そちらをゆっくり見てみて下さい。
ボジョレー・ヌーヴォを飲み比べ |
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同じヌーヴォでも色の差がこんなに |
そんな今週、このサイトのシステム的なことを管理してくれているスターテレコムの亀山さんから、日々の製作更新のためのメール往復の中、「ワインを飲み始めようと思うんですが、どんなものから飲めばいいですか?」と質問があり、ちょっと難しい質問ですが“例えば私はこうでした”という返事を書いていたところ、なんやかんやで結構な文量になり、ちょうどボジョレーのことでも書こうと思っていた週だったということもあり、ならばこれをこのまま今週のコラムにしてしまおう。というわけでボジョレー・ヌーヴォのことは専門家・五十嵐くんにまかせて、ここから先は亀山さんへの返信メール文章をもとに、私がどのようにワインを飲んできたかをお読みいただきます。
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こんにちわ〜あ〜ぁやんなっちゃう〜なあ〜ぁあ〜おどロイター通信。
さて、ご質問いただいたワインの件ですが、私の場合、ワインを飲み始めた93年から渡仏以前までの数年間は、ボルドーの有名シャトーのものやイタリアのDOCGものなど高い金だして必死こいて飲んでましたが、パリに住んでからはそれもなんだか違うんじゃないかと感じ、以来できるだけ安価でできるだけいろんな国のいろんな品種を飲むようにしています。外食する時も、基本的には料理に合わせて選びますが、メニューの中でなるべく低価格のものを飲みます。それがうまけりゃワインが安くてうまい店、ということになりますから。
亀山さんがワインを飲み始めようとする場合も、基本的には“いろんなものをどんどん飲む”がいいと思います。といっても、やみくもに飲み続けてもただの酔っぱらいになるだけですので、私は小さいノートを作ってました。ワインを飲む度に「いつ/どこで/何を/いくらで/何を食べながら/誰と/簡単な感想」をノートに記録していました。
例えば:
2006年9月31日/トラットリア・アンタダーレ/Chianti Classico Riserva Ducale ’99/5500円/ピザ、オッソブッコ/西嶋夫妻/サンジョベーゼという品種が主らしい
2006年10月35日/焼きとり「串刺し亭」/Primavera(Caraffa di 500ml)/1500円/鳥わさ、皮たれ他/松本晃彦/わかんないけど安くて飲みやすい
と、こんな感じです。
これを繰り返しているうちに、だんだんと“トスカーナ州ってどのへん?”とか“その品種はそもそもなに?”とかそのような興味は自然とわくもので、「明解ワイン辞典」とかそのような本で調べていくうちに、頭の中に自分なりの“ワイン地図”がぼんやりながら徐々に形成されてきます。さらにいろいろ飲み続けその都度ノートに書いているうちに頭の中のワイン地図の範囲がどんどん広がり、次第に鮮明になっていき、そのころには気がつきゃちょっとしたウンチク野郎として周囲からけむたがられます。しかしウンチ野郎として臭がられるよりはマシだと思います。
「価格」も記録するべき事項としては重要です。ワインの値段はピンカラ兄弟キリマンジャロ。同じような銘柄のものでも値段は桁違いのワインもありますし、また、ソムリエさんがいるような店で料理に合わせてワインを選んでもらう時に、リスト上の価格を指差しながら「これくらいのお値段でいくつか見せてください」と言うのは決して恥ずかしいことではなく、選ぶ側もこちらの予算感覚を気兼ねなく判断できるのでスムーズ、というわけです。
肉には赤、魚には白というおおまかな基本的考え方はあるとして、しかしこれはルールでもなんでもなく、ワインを飲む国の人達の気候風土に根付いた常識的感覚だったりします。あらためて考えてみると、パリ在住時に比べて日本に帰ってからは、ボルドー地区に代表されるカベルネ・ソービニォン(品種)などのどっしりしたタイプのものを飲む機会が減ったような気がします。これはたぶん帰国後の食生活の肉率が減ったからではないかと思われます。それなりに気候風土にかるく左右されているようです。
有名なソムリエ・田崎真也さんがテレビで言ってたんですが、たとえば和食を食べるとき、「わさびをつけたくなるものは白」「七味をかけたくなるものは赤」なんてのはどうでしょう、と提案していました。うぅむ、さすが、なるほど。わさびをつけたいか、七味をかけたいかは、ルールではなく、あくまで日本人の感覚です。そう言う選び方でいいんだな、と妙に納得しました。
ってな感じでこれからの人生ゆっくり時間をかけて、ワインノートでもつけながら長いタームでいろいろ飲んでみる、ってのが良いと思います。ちなみに私はもうノートはつけてませんけど。
クイズコンペ12月開催はちょっと無理っぽくなってきました。
では、股。 KAN
※「コラム No.077」のクイズの答えは“わさび”でした。
窓から店内を覗くと、金髪青眼のロシア人が割烹着を着てウロウロしているというステキな雰囲気が充満していました。
2006/11/24
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