No.500
『更に突っ込んだ自主全曲解説 1 LttM』
さぁ、ついに、ホントに発売になりました新アルバム【6×9=53】、もうすでにお楽しみいただけてますでしょうか。
プロモーションで各地を訪れ、お世話になっている杏子の吾郎、現在も広島に向かう日航機内でこれを書いています。
プロモーション用のフライヤーには、『自主全曲解説』=いわゆるセルフライナーノーツを書いていますが、よく考えれば、これがみなさまの目に触れる機会はあまりないということに今更ながら気づいたもんですから、当サイトの【6×9=53】からリンクするかたちで、お読みいただけるようにしました。
宣言どおりにすごく久しぶりの『金曜コラム』では、その『自主全曲解説』に追記するカタチで、更に『突っ込んだ自主全曲解説』書いてみようかと思います。が、一挙に書くとそれはそれでかなりたいへん気がしますので、1曲ずつ、細かく書くことで更新回数を増やす、ということにします。まず今回は『Listen to the Music』です。
【更に突っ込んだ自主全曲解説】
01. Listen to the Music ~Deco☆Version~ *作曲2008〜11年/作詞2011年
2011年に発表した、このアルバムの先行シングル曲を、ストリングスやグロッケンでかわいくデコってみたDeco☆Version。
たまたまラジオで聴いたかっこいい外国の曲、そっち方面に詳しそうな友人の話だけを頼りに収録内容も確認できぬまま買ったレコードを、何十回も繰り返し聴き込んでいた私たちの若い時代とは、音楽の価値観がすっかり変わってしまった昨今の現状を嘆く筋合いもなく、音楽家としての変わらぬ意志を描いています。
どこがどのようにDeco☆Versionなのかを具体的に書いてみますと、まず、この曲をアルバムの1曲目にすると決めた時に、弦楽器のプレ・イントロを思いつきました。歌の出だしのメロディを2nd ViolinからViolaに受け渡し、それに1小節遅れて2014年に購入したSAITOの高級グロッケンが、歌メロを追いかけるように奏でます。
1回目のBメロ「会いたくて〜」のから再び高級グロッケンが入ってきて、次のAメロ「一瞬ふっと休日〜」からストリングスが入ってきます。
ここ数年、数十曲の弦アレンジをするなかで、どうやら“自分の弦アレンジのパターン”みたいなものができてきた気がしていて、それはあまりよろしくないと思ったもんですから、この曲では、これまでにやらなかった弦アレンジを意識的にやってみました。例えば、2拍目にアタックをつけるのが自然だと思った場合は、敢えて4拍目にアタックを、とか。
また、2回目のBメロ後半「いつの日か〜」では、シングル時にすでに入っているマンドリンのフレーズをそのままありきでの弦アレンジ、つまり、Violin×2/Mandoline/Viola/Celloの五重奏アレンジを施してみました。
だったら、最後のサックスソロにも、弦を絡めまくったらどうなるか、と思いやってみましたら、“かわいくDeco☆”どころか、どっちかっつうと、人の顔写真にマジックで髭を描いたりメガネを描いたり、眉毛を異常に濃くしてみたり、みたいな、それはそれは相当タチの悪いイタズラ的なアレンジになり、コード的にも部分的に明らかな不協和音がありますが、それは、ある意味、これまで自身の弦アレンジのパターンをパックリ打ち破れたと思えますし、また、アレンジャーの方にはどうやったってできない、いや、じぇったいやっちゃいけないアレンジであると思いましたので、平気な顔で録音しました。2011年にサックスを吹いていただいた山本拓夫さんには、できるだけ気づかれないよう慎重に行動しています。
初めてこの曲を聴いていただく方には、特に最後のサックス+ストリングス部分は、「ん? これ、だいじょぶか?」と思われる危険性も孕んでいますが、完成盤を改めて聴くと、まぁ、このくらいやって、やっと“Deco☆”かな、と思っています。
あと、気づいた方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、1回目のBメロの後半の歌「やっぱダメで」が、このVersionでは「でもやっぱダメで」になっています。これは、今回のレコーディング中に「でもやっぱダメで」のほうが、ダメ感がより強いよなぁ、と思ったので、トラックダウン時に「でも」だけ追加録音してみました。これもひとつの“Deco☆”です。
最後に、「Listen」の発音は、「リッスン」ではなく、英国式に「リストゥン」です。高校生の時に聴いたPaul McCartney & WINGSの『Listen To What The Man Said』という曲、数年経ったある時、「これって“リストゥン”って発音してるよなぁ」と思って調べてみたら、英国では「listen=リストゥン」で、「リッスン」は米国式発音だということがわかりました。なので、Paul McCartneyさんの英国式で「リストゥン」と歌っています。これは私の反米思想の小さな表れのひとつでもあるのかもしれません。ちなみに「often」という単語も、米国では「オッフン」ですが、英国では「オフトゥン」みたいです。
はい、こんな感じで不定期にあれこれ書いてみようと思いますので、アルバムを繰り返しお楽しみいただきながら、ちょくちょくこのサイトを覗いていただければと思います。
気がつきゃ、この『金曜コラム』も今回で500回です。これからも、503回、509回を目指してときどきがんばりますので、よろしくおつきあいください。
2016/02/09
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