No.420
『靭とくまモン』
さて、今週はレコーディング終了の報告です。
まずは9月11日(水)に発売される『靭のハミング』。スターダスト☆レビューの皆さん、馬場俊英くんと私の3組によるコラボレーション作品ですが、根本要さんの一声により、詞曲は私がやらせていただきました。そのあたりの経緯や楽曲の事前解説については、 コラムNo.418をお読みいただくとして、レコーディングは7月末からトラックダウン・マスタリングを含めて4日間行われました。
計8人いますから、いわゆる同期モノは使わず、できるだけライブ感のある演奏を録りましょう、ということで、スタジオにすべての楽器をセットして、何度も練習し、その勢いで録っちゃう、みたいな、そんなやり方です。と言っても、本当に本当のせ〜のドン!ではありませんが。
全員での演奏を繰り返し、ある程度ノリがまとまってきたあたりで、ガイドとなる仮歌を録音します。それを聴きながら、全員で更に繰り返し演奏し、ドラムの良いテイクが録れたら、その他の楽器はそれぞれの自己申告で部分的に録り直したりしながら作っていきます。アコースティックギターは左に要さん、右に馬場くんと振り分け、スロー部分のピアノは私が、ロック部分のピアノは添田くんが弾いています。スタジオ内のセッティングの都合上、VOHさんのパーカッションと添田くんのオルガンは後からダビングしました。という、昔ながらのとてもオーソドックスなやり方でした。すべての楽器の録音が終わると、根本要さんを除くスタレビュの皆さんのコーラスを録って1日目は終了。
翌日、要さんと馬場くんと私のメインボーカルダビング。馬場くんは私のデモテープをかなり聴き込んだようで、すでに充分に自分のものになった状態です。そこをさらに「馬場くんはもっともっと馬場くんになんなきゃ!」みたいな不思議なディレクションを強要したりしながら、たいへんに勢いのある良い歌が録れました。要さんはもう要さんですから、なにも言わなくても要さんの歌になりますし、それを想定して作ってますが、それでも敢えて「この部分は秦くん風に」とか「ここのニュアンスは平井堅さんで」と注文をつけ、要さんは「なんでだよ」と言いながらもうまいことやってくれます。さすがです。最後に私の歌を録って、その後、3人でコーラスをダビングしてこの曲は終了。
そして、カッペリングのドボルザークの『新世界より』の一部を独自に編曲した『家路のハミング』の録音です。こちらは楽器を一切使わない、8人によるアカペラもの。大まかに4パート、細かく言うと、部分的に6パートになるアレンジを、1パートずつダビングしていきます。アカペラ経験は充分に長いスタレビュのみなさんですが、歌詞がなく延々「ウ〜」だけのアカペラ・ハミングですから、無駄のない息の使い方やブレスのタイミングなど、とてもセンシティヴなレコーディングでした。
翌日は都内の公園でジャケット撮影。これについては、具体的なことはここには書かないないほうがあとあと楽しいと思います。
で数日後、これら2曲トラックダウンをトラックダウンしました。
このレコーディングの模様は、馬場くんの総合司会による20数分のドキュメンタリーDVDとして初回限定盤につきます。かなりおもちろいですから、是非初回盤をお買い上げいただくことをおすすめします。
この曲『靭のハミング』は、9月14日(土)の大阪でのイベント【靭公園 MUSIC FESTA FM COCOLO 〜風のハミング〜】で初生披露されますが、せっかくなので関東でも、ということで、9月24日(火)に横浜BLITZでスペシャルライブもやることになりました。タイトルは【ときめき☆ハミングロック学園】。これは最近よくあるいわゆる“レコ発イベント”的なライトなものではなく、ちゃんとライブとして3組でばっちり演りますので、是非観ていただきたいと思います。商品に封入された応募ハガキでの抽選です。
で、もうひとつは9月25日(水)の発売が決まりました『くまモンもん』、あの“くまモン”の公式イメージソングです。こちらは熊本出身の森高千里が歌唱。隣県福岡出身の私が作曲して、歌詞は、くまモンの生みの親でこのプロジェクトのプロデューサーである小山薫堂さんと私との共作。具体的には、私が作った歌詞タタキダイをベースに、「ここの表現はもっとこうしたほうが・・」とか、「だったらこういうのはどうでしょう」、みたいなやりとりを繰り返します。薫堂さんは、イメージだけではなく、具体的なフレーズ案を複数提示してくれるので、それに呼応する私もあまり迷うことはなく話し合いはスムーズに進みましたし、重要な部分の多くは薫堂さんによるフレーズになりました。
2月にレコーディングしたものは、熊本県内で多くの皆さんに曲をおぼえていただく目的で制作されました。で、今回はCDとしてリリースする製品用に、森高千里による歌と一部の楽器を残して、演奏の大部分を再録音しました。
アレンジメントは、Scritti Polittiの『Small Talk』なイメージ。具体的には、サビ・Aメロ部分にはロングトーンで埋める音色は一切使わず、ほとんどの楽器が短発音、つまり点の組み合わせによって隙間を充分に作りながらコード感を出す、そんなアレンジです。そして、それとは対照的にBメロ部分は、ピアノとオルガンで全体をべた〜っと埋めて、そこにバイオリンが奔放に動き回るというサウンド。
3月に出来たサンプルCDを聴きながら、やっぱりBメロ部分はアコースティックギターのジャキジャキしたストロークが欲しいよなぁ、と思ってまして、それを誰で録音するか、と考えてまして、そんなに深く考えなくてもそれは秦基博くんでしょう、熊本の隣の宮崎生まれだし。という結論に達したので、オファーしたところサクッと快諾をいただきました。
もちろん“ギター:秦基博”とクレジットされることにより、秦くんのファンの皆さんが「だったら買っちゃうモン♡」と思ってくれるだろう、ふふふ、という下心は充分にありますが、しかし、アコースティックギターのみの参加ですし、そのギターの音が前面に押し出されてるわけではないですし、秦くんが「もんもん♪」って歌ってるわけでもないですから、秦くんの名に惹かれてCDをお買い上げいただいた方が「え? 秦くん、どこ?」と思ってしまう可能性もいなめなめなめなめません。なので、どのような録音をやったのか、ということをちゃんと書いておくべきです。
レコーディングは6月下旬。全国ツアー終了後の休暇明けの秦くんは、Bメロ部分だけの録音にもかかわらず、【Martin D-28】【Gibson J-45】【Gibson J-50】とアコースティックギターを3本も持ってきましたよ。そして、私が根本要さんから譲り受けたとされる高級ギター【マーチンコ】を含めた4本のギターそれぞれで録音してみて、その響き、音の混ざり具合などを聴き比べて、マイクを換えてみたり、コードを押さえるポジションを複数試してみたりなどして、最終的に、秦くんの【Gibson J-45】と【マーチンコ】の2本に決定。それぞれを左右に振り分ける形で録音しました。(具体的な型番はさっきあわてて秦くんに聞きました。)
と、このように、ちゃんとこだわりの録音をしてますので、是非ヘッドフォンで細部まで神経を尖らせてお聴きいただければと思います。
あとは、小山薫堂さんによる「カ〜ン!」というティンバレスの響きも聴きどころのひとつです。ある打ち合わせの時に「薫堂さん、なにか楽器は演奏されますか?」と聞くと「いえいえ、ぼくはぜんぜん」と後ずさりしたので、「ダメです」と言いました。森高千里の歌入れの日にスタジオに表れた薫堂さんを取り押さえて、ほぼ無理矢理スティックを握らせて、カ〜ン!と叩いていただきました。特に1回目のBメロ前のショットは、決してミュージシャンには出すことのできない絶妙なタイミングで印象的です。さすがです。
というわけで、 『靭のハミング』と 『くまモンもん』、どっからどう聴いてもまったく別ベクトルの2作品ですが、どちらも一生懸命つくりましたので、迷うことなくお聴きいただけることを強く希望します。
え? 自分のアルバム? ですか?
・・ぅ、・・・ぅ、 うぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、 だ〜ってだってだって伊達公子〜〜〜!(ただただ泣)。
2013/08/09
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