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Friday Column

No.406

『かべちょろが鳴いた日』

レンキューもシューバンですが、皆さまいかがお過ごしデモリッションマン。
今週はちょっと長くはなりますが、とても感動的な話なのでおつきあいください。

5月1日(水)の午後、とんかつ食って買物して帰ってきて玄関のドアを開けたら、う・・・、足元にちっちゃいかべちょろがいました。どこからどのように侵入したのか。いや、この小さい身体であれば、ちょっとした隙間からでも侵入は可能でしょう。

福岡の実家は団地で、かべちょろはときどき出現してましたが、動きはゆっくりでこちらの予想外の方向に素早く飛んでくるなんてことはなかったもんですから、クモやゴキブリほどの緊急事態にはならず、ここでどのような行動をとるべきかを冷静にいろいろ考えて、最もジェントルな対処法はマッチ箱でした。これはあくまで身体全体がマッチ箱に収まり切る程度の大きさの、いわゆる“ちびかべちょろ”にのみ有効な対処法です。

壁に留まっているちびかべちょろを、マッチの中箱で速やかに覆い、そのままの状態で、外箱を静かにスライドさせてマッチ箱の中に捕らえたら、窓を開けて外に向けて、マッチの中箱をスライドして逃がす、という、極めて紳士的で友好的な方法でした。

マッチ箱に入らない大きさのかべちょろが屋内に侵入した記憶はないので、ほとんどの場合、これで済んでました。が、一度だけ、かなり大型のかべちょろを部屋の中で発見した時は相当うろたえましたよ。

それは、たしか1992年のお正月。タイ・バンコクに単身旅行に行って、そんな流れでちょっと魔が差して、柄にもなくバンコクから車で2時間のパタヤビーチという海辺のリゾートに行ってみちゃった時のこと。泊まるのはビーチの北端にある【Dusit Resort】という高級リゾートホテル。えぇ、こんなやつですよ。


ベランダからプールを見おろす

昼間はレンタルバイクで村をうろうろしたり、浜辺を歩いてくらくらしたり、夜は街の食堂でビール飲んでなんか食って、ホテルに戻ってきました。


夕暮れのパタヤビーチ

寝酒にもう一杯だけ、なんか飲みたいなぁ、ということでルームサービスでなんらかの南国らしくカクテルめいたお酒をたのみました。持ってきてくれたサービスの男性は華奢でパッと見ちょっと女性的。テーブルにグラスを置く仕草、サインをする伝票を差し出す仕草から、あぁ・・・、たぶん、コッチ(手のひらを裏返しにして頬にあてる)だな、と思いましたが、ま、タイですし、たいして驚くことでもないのかもしれないな、と気に留めることなく、コップンクラ(ありがとう)と言って、少額のチップを渡しました。

さぁて、ベランダで夜の海でも眺めながらグラスを傾けて、まったりとリゾート気分に浸るかぁ。日本じゃバカみたいに忙しかったしな、この時期こんな時間はなかなかとれやしない、貴重なリラクシングタイムなのさ。ってことで、レースのカーテンをササァーっと開けると、

うっ!

かべちょろ・・・です。窓の上の壁に、つまり部屋の中にです。しかも、かなりデカイです。福岡で見ていたかべちょろはマッチ箱に入る程度のちびかべちょろでしたか、いやぁ、さすがタイ、さすがパタヤ、しっかりした体格、ビッグです。

さぁ〜て、どうするか、この大きさには出会ったことないし、ひとりで立ち向かう勇気なんでこれっぽっちもありませんよ。かといってこのままでは、寝れないどころか、部屋に居るだけなのに全く気を抜けない状態が続きます。まったりとリゾート気分でリラクシングタイムどころではないのです。

フロントに電話して、「ベリービッグなかべちょろがいるんで獲ってください」って言ってみるか。いや、タイだしなぁ、パタヤだしなぁ。かべちょろなんて、いて当たり前なのかもしれんしなぁ。だとしたら、日本のホテルで「蚊がいますのでなんとかしてください」ってフロントに電話すること以下かもしれん。だいたい、“かべちょろ”って英語でなんて言うんだ。“ウォール・スニーカー”か? バッタ=グラスホッパー的な考えでいくと充分アリなような気もするが、それが通じる気はまったくしない。ってゆうか、だいたいからして“かべちょろ”って呼び方自体が、福岡だけのもんなんじゃないか。んんん、まいったなぁ・・と考えていると、かべちょろがちょろと一歩だけ動きます。なんか、すごくいやだ。

そうだ、ルームサービスでなにかもう1杯頼んで、持ってきてくれたサービスの人に、あくまで、ついでに、かべちょろを退治してもらえばいいんだ。そうだそうだ、そんな簡単なことになぜ気づかなかったんだ。・・・というわけで、1杯目の南国らしくカクテルめいたお酒を、なかば一気で飲み干したら、ルームサービスに電話をかけて、次なる南国らしくカクテルめいたお酒を注文し、ビッグなかべちょろの動きを静観します。

10分ぐらい経ったでしょうか、やっとルームサービスがやって来ました。1杯目の時と同じ、華奢でコッチ系っぽい男の子です。2杯目のグラスをテーブルに置いて、1杯目を下げて、伝票にサインをして、コップンクラと少額のチップを渡しました。で、彼がさがろうとした時に、「で、あのぉ・・」と呼び止めて、(いや、もちろん英語で言ったんだと思いますけど)、振り返った彼は「え? なぁに?」という感じで少し目がハートになっているように見えました。

「いやいやいやいや、そうゆうんじゃなくて、あの・・・、あれ・・」と、窓の上のビッグかべちょろを指差しました。すると、「オウ! あ・れ・ね!」って感じで近づいて、伝票を挟んだバインダーで、ビッグかべちょろの後頭部あたりをあくまで軽〜くポン!と叩き、ショックで床に落ちたビッグかべちょろのしっぽを指でつまんでプラプラさせながら、「スモール・クロッコダ〜イル ♡」と言って、ウィンクして部屋を出て行きました。

スモール・クロッコダ〜イル ♡ って・・・、はぁ・・・、なにはともあれ、よかったです。やっと落ち着けます。とは言えもちろん、その後ベランダに出る勇気などなく、タイ語のテレビかなんか見ながら、南国らしくカクテルめいた2杯目を飲んで寝ました。・・んだと思います。

で・・・、話はやっと戻って、2013年5月1日午後の私の家の玄関のちびかべちょろの件です。

家の玄関の中に入ってきてたのは、しっぽをまっすぐ伸ばしたとしても体長5cmに満たないであろうという“ちびかべちょろ”です。玄関ですから、とにかく外にさえ出ていただければ私には何の問題もないので、ドアを開けた状態にして、そこにあった不要な広告の郵便物の端っこで、ちびかべちょろをホレホレと外の方向へ誘導、というか、追いやります。ある程度はうまいこと動いてくれたんですが、しかし、あぁゆう生き物の視界・視力ってのは、どういうふうになってるんでしょうかね、もうあとちょっとで外、というところまで来て、ここでまったく動こうとしなくなりました。

それまでは、郵便物の端っこで、決してちびかべちょろのボディにタッチすることはなく追いやっていましたが、あまりに動いてくれなくなったので、仕方なく、あくまでソフトにちょっとだけ、郵便物の先っぽでボディにタッチしてみると、

「ツィ〜〜〜〜」

ん? なんだ? と思い、もう一度、タッチしてみると、

「ツィ〜〜〜〜〜〜っ」

と、鳴き声を発しているのです。

ひやぁぁぁ、私は生まれて初めて聞きましたよ、かべちょろの鳴き声。

「ツィ〜〜〜」という表記が適当かどうかは微妙ですが、音的に再現していただくとすると、上の前歯で下唇のやや奥めのあたりを噛むようにつけて、その状態で息を吸って前歯の隙間を鳴らす、そんな感じの音です。ピッチ的にはやや高めで、音量的には限りなくミニマムなイメージ。だって、しっぽをまっすぐにのばしたところで5cmもないくらいの極小動物です。

そんな小さな小さなちびかべちょろがですよ、体長でいうと32倍はある私に向かって、「ツィ〜〜〜〜」と抗議もしくは威嚇の雄叫びをあげるのです。その身長倍率でいうと、私がゴジラに向かって「背びれデカ過ぎんだよ〜!」といちゃもんつけているようなものです。その勇敢さに感動せずにはいられません。

で、その後は、時間をかけて話し合い、やっと玄関の外に出ていただきました。

では最後にその勇姿を。



2013/05/03



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