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Friday Column

No.366

『独り相撲、しかも負け』

5月12日(土)、Perfumeさんの日本武道館公演を観せていただきました。いやぁぁぁ、すごかった。なんて言うんでしょうかねぇ・・、私たちBAND生演奏ものと種は異なりますが、しかし、同じ音楽エンターテインメントとしては、その演出・構成すべてを含めて、今の日本に於いて最高レベルであると私は断言します。ますますファンになりました。マジでマジで。

さて、話はあっけにとられるくらいコロッと変わります。

パリからの帰国以降、“ラーメン刑事” “つめけんポリス”として全国的に活動してきた私ですが、いやぁ、ここにきて、まぁ、正直言って、ラーメンというものにいいかげん飽きた、というか、面白みがなくなってきた、というか。異常に長く続くこの空前のラーメンブーム、なんか、もう、オレは、いいかな・・・みたいな。ブームってのは、ブームだから、ブームになっちゃったら、もうあとはブームだしね。・・という感じでしょうか。

なもんですから、“おいしいラーメン”なんてものが全国にあふれてるとすると、興味の対象は必然的に“まずいラーメン”に向かってしまう人間性の私ですが、それはそれでそーとー長い話になりますので、またいつか別の機会にじっくりと書かせていただくとして、今回は“野菜炒め”の話です。

それはいわゆる街の中華屋さんの野菜炒めなんですが、野菜炒めって、見た目のボリュームがあり、例えば昼食にそれを平らげると結構がっつり食べた感が残るんですが、でも6時間後にはちゃんとお腹がすくので、夕食はおいしくいただける、ってのが良いのです。まぁ、中華ですから油分はちゃんと多めに含まれますが、でも、主役が“野菜”である、その響きが、がっつり食べてもそんなに間違ったことはやってない感じ?になんとなくしてくれるのです。そんなわけで、去年あたりからすっかり“野菜炒め志向”になってきてます。

しかし、6時間後にちゃんとお腹をすかせるために、うまく調整する必要があるのは御飯の量です。街の中華屋さんの定食で出される御飯は、基本的に私の胃袋の許容量を超えていますので、ほとんどの場合は、「御飯少なめ」とリクエストし、またメニューに「半ライス」の設定がある場合はそれにします。

つい先日、この御飯の量でちょっと微妙なことになりまして。その日私が訪れたのは、店構え・内装・値段設定からすると、“街の中華屋さん”というイメージよりはややグレードが高く、かといって決して高級店ではない、でも歴史の古い中華料理店。ランチメニューを見て“野菜炒め”があることを確認しましたが、その隣の“回鍋肉絲”が目に入ってしまい、んんん、どぉ〜しおっかなぁ・・・と味を想像するうちに、甜麺醤の甘い感じがあっという間に脳を占領してしまったので、“回鍋肉絲”を注文しました。この中華料理店、これまでは年平均2〜3度くらい、それも夜に行くことが多かったので、お昼の定食の御飯の量がどのくらいかは把握していなかったのですが、ランチセットには焼売も2個ついてたので、なんとなく「御飯少なめで」とリクエストしました。

で、出された回鍋肉絲ランチ。客層も年齢がやや高めの女性が多いせいか、御飯が思ったより小さい、ごく普通の御飯茶碗に軽めの盛りでした。あ、こんなもん?と、まわりのテーブルを見渡すと、私のはリクエストどおり少なめになっているようです。さすがにこれはちょっと少ないか、とは思いましたが、ま、ペース配分をうまくやればだいじょぶだろうと食べ始めます。甜麺醤と豆板醤が絶妙なバランスで、キャベツもシャキシャキでたいへんおいしゅうございますが、やや味が濃い感じはいなめなめなめず、それだけにどうしても御飯がすすんでしまいます。なもんですから、まだおかずを3割ほど残したあたりで御飯がなくなっちゃいました。思えばそんなことするのは大学生の時以来かもしれませんが、少しばかりの勇気をもって、御飯をおかわりすることにします。

が、ここは相当慎重にいかなければなりません。このあと私がほしい御飯は、約3割だけ残った回鍋肉絲に見合う量、つまりこの御飯茶碗に半分もいらない、ほんのちょっとで良いのです。もともと私が御飯を少なめにするのは、出されたものを残すのがイヤであるのと同時に、「あぁ〜、食った食った腹いっぺぇ」になるのもイヤだからです。これは大変贅沢な話ではありますが、食べたい量を超えると、せっかくそこまでおいしくいただいていたものが、残さないために頑張る、という変な作業に移行してしまうのはちょと悲しいからです。

先にも述べたように、そもそも私が“野菜炒め志向”になってきたのは、がっつり食べた気になっても6時間後にはちゃんとお腹がすく、ということが最も大きな根拠でもあります。ゆえに、このおかわりの量は相当慎重にいかなければならないのです。

もし、出された御飯が思いのほか多かったとすると、私は必要以上と判断した分は残す、という選択をするでしょう。もし、そんなことになったら、最初に「御飯少なめ」と言っておきながら、やっぱり足りなくなっちゃっておかわり。そこで出された御飯を食べきれずに残す。なんてのは、決して作り笑顔で乗り切るわけにはいかない、なんともわがまま極まる行為なのです。

そんなことを考えるうちに残りの回鍋肉絲が冷めてしまうと、それこそ元も子もないので、おかわりをします。「御飯をほんのちょっとだけおかわり」とお願いするとして、この“ほんのちょっと”の解釈は人によってまちまちです。3人の店員さんはみな女性。うちふたりは、とても膨よかな趣です。もうひとりが最も若く、華奢なお嬢さんです。この場合、“ほんのちょっと”の解釈からの御飯の実量が最も少ないのは、この華奢なお嬢さんではないだろうか、と考えるのは自然なことです。

いや、しかし、待てよ。“ほんのちょっと”の解釈、そこには配膳人としてのサービス業務の考え方も関わってくることも考慮すべきではないでしょうか。「多かったら残してもかまいませんよ」という寛大な考え方もあるでしょうし、経験の浅い配膳人であれば、「最初少なめと言って足りなかったんだから、本当はけっこう食べる人なのかも」と誤解してしまう危険性も充分あります。また、熟練の配膳人であれば、客人の体格・顔色、食べるテンポ、おかずの残量などを総合的に考慮して、この場合の最も適切な“ほんのちょっと”を割り出すという、高等かつ繊細な感性を持っていることも期待できます。・・ってことは、若くて華奢なお嬢さんではなく、配膳経験が最も豊富そうな膨よかな趣のふたりのうち、年齢が高いと思われる女性にお願いするべきか。いや、年齢が高い=配膳経験が長いと断定するのはやや軽率かもしれませんし、仮に思い切って断定したところで、私のおかわり注文を受けたその女性が、自らしゃもじをとってジャーから御飯をよそるとは限らないのです。厨房の中の料理人に「おかわり、少なめで〜」と言い放って茶碗を渡してしまえば、ここまでの熟考は全く意味のないものとなってしまいます。あぁぁ、じゃぁ、オレはどーすりゃいいんだよ。

そんな間にも残された回鍋肉絲の温度は確実に低下しています。もうこれ以上、時間をかけるわけには行きません。よし、決めた。最も若くて華奢なお嬢さんに勝負を賭けます。

「あのぉ、御飯をほんのちょっとだけいただいてもいいですか」

彼女は短く頷いて私の茶碗をお盆にのせて厨房前に戻り、そして、彼女自身がジャーを開けて、しゃもじで御飯をよそるのを私は確認しました。果たして、私のもとに運ばれたおかわりは・・・、

はぁぁぁぁ、残念。1杯目とほぼ同じ量、盛ってありました。

いや、彼女には何の責任もありません。完全に私の失敗です。彼女はむしろ心やさしい良い娘です。もしも、御飯の量に慎重になるケースではなかったとしても、私はなにかにつけてこのお嬢さんと目が合うタイミングを測ったでしょう。だから、そんな彼女に「あぁ、やっぱり多かったんだ・・、ごめんなさい」と悲しい思いをさせるなんてことは、男としてあってはならないのです。だから私は、残り3割の、それも油が分離し始めた回鍋肉絲で、軽めながらもちゃんと一膳のおかわりを完食しました。そのおかずと御飯のバランスの悪さ、予定外の過度の満腹感。すべて私の失敗です。

「少なめ」とリクエストしたことによって、ちょっと少なかった御飯。ということは、ハナっからなにもリクエストを付け加えなければ、私にとってちょうど良い量の御飯が出されていた、ということです。つまりこの件は、まったくもって私の独り相撲、しかも負けです。私は自分自身に負けたのです。

あぁぁ、やっぱり私は、“野菜炒め”とか“回鍋肉絲”とか気取ったこと言ってないで、素直にラーメンブームの渦中に戻るべきなのでしょうか。

・・・なんてことを考えながら、去年はどのくらい食べたのかなぁ、と、2011年の手帳に記されたラーメンを数えてみたら、あらららら。2010年よりも明らかに増えてました。「いいかげん飽きた」とか「面白みがなくなった」と言いながら、週5ペースで食ってやがってました。なにが“野菜炒め志向”だよ。言ってることとやってることがバランバランの自分自身にちょっぴりテレながら、今週はここでオヒラキとさせていただきます。


なにが“野菜炒め志向”だよ

※写真はイメージで、本文の内容とは関係ありません。

2012/05/18



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