No.277
『高級焼肉を強く要求する正当な理由』
ゴロッ、ブチッ、え? ガ〜〜〜〜ン。というわけで皆さまにご心配いただいている瀕死のオールドファッションド携帯電話【P205】の件ですが、2日・木曜日、家を出る時に玄関で高級革靴を履こうとしたら、シャツの胸ポケットからゴロッと落ちたんですね。そしたら、ブチッて音がしてバッテリーが外れましてね。で、よく見てみると、バッテリーを本体に固定するツメの部分が折れたのですよ。はぁぁぁぁぁぁ、ついにとうとう使用不可能か。
アロンアルファーでっくっつけるったって、動く部分だしなぁ。試しに外れたバッテリーを本体につけてみましたら、あらららら、電源はちゃんと入り、液晶画面が表示されました。つまりツメが折れたので手放しの状態でバッテリーを本体に固定することは不可能ですが、手でしっかり握っていれば、電源はONの状態を保てるということがわかりました。発着信については、とっくのとうちゃんほぼ機能してないわけですから、そういう意味で言うと、ツメは折れたものの状況はさほど変わったわけではない。とりあえずボタンにかからない部分を輪ゴム3重巻きで固定。“事なきを得た”ってのはこういう場合に使っていいんですかね。ある意味・逆に・ある反面、ファッション性がアップしました。
さて、そんな私ですが、9月に入り、7月8月のたいへんに忙しい時期からはやっと抜け出しました。とは言っても、アレンジしたり歌詞書いたりという作りものや、また、ライブがあるからじぇったい風邪ひけない、という状況から開放されたというだけで、実質やることはまだまだやまのようにありまして、ここ数日もトップページのバナー作成などに必死こいてました。
というわけで、デビューからのアルバム12タイトル+アルバム未収録曲集のリマスタリング再発売【THE RESTORATION SERIES】、そして【弾き語りばったり #13 ~Moonlight Sirinade~】が正式発表となりました。
【THE RESTORATION SERIES】については、その詳細ページと合わせて『コラムNo.274』をお読みいただき、できれば強い興味をお持ちいただくとして、問題は【弾き語りばったり #13 ~Moonlight Sirinade~】です。どうですか、今回のサブタイトル。
実は去年の【弾き語りばったり #11】のサブタイトルをうまく思いつかなかった私は、発表1週間前になって、私の回りのデザイナーさんやヘヤメイクさんなどのクリエイティブな皆さん7〜8名に、あわててサブタイトルを緊急募集して、その中からデザイナー・片山裕さんの【言った、言わない】を採用させていただき、その責任をとってもらうカタチで、オリジナルグッズのデザインも片山さんに依頼しました。
で、今回はもっと広げまして、周辺スタッフをはじめ、お仕事やプライベートでおつきあいのあるクリエイティブな皆さん約33名に、7月下旬に「あくまで無責任に、自由すぎる発想で」とサブタイトル募集のメールを一斉送信しました。そんな私の期待どおりにたいへんに無責任なサブタイトルが2週間で約80作品も集まり、その中から厳正なる独断審査の結果、【弾き語りばったり #13 ~Moonlight Sirinade~】に決定させていただきました。
作者は田口昇さん。長崎県佐世保市出身のたぶん47歳。80年代半ばからの友人で、当時はお互い大学生でしたが、現在はなんらかの大手老舗出版会社のなんらかのオトナ向け週刊誌の編集長をやっているようです。元々は【弾き語りばったり #13 ムーンライト・シリナーデ】と、カタカナ表記での応募でしたが、タイトルロゴや関連グッズ制作のほか、なにしろ私自身の“クリーンでポライトなアーティストイメージ”保守を第一に考慮して、英語表記にさせていただきました。プロモーション課程に於いて、「ムーンライト・セレナーデ、KANさんの弾き語りの世界が想像できて、素敵ですねぇ」などと、状況を把握できていないインタビュアーさんに遭遇した場合は、あえて訂正することなく、そのまま紳士的にやりすごすこととします。
サブタイトル募集メールの段階で「採用させていただく方には、金銭とは無縁の極めて精神的な謝礼を」と明記してはいたのですが、田口昇さんは「1人前1万円の特上カルビを」と強く要求してきたもんですから、仕方がありません。小学6年生の長男・義武(いさむ)くんとともに、都内の高級焼肉店に招待しました。
実は、田口昇さんには、私に高級焼肉を強く要求するに充分で正統な理由があったのです。
あれは1980年代の末期だったでしょうか。当時の私のマンションのすぐ近所に住んいた田口昇さんは、ほぼ毎晩のように私の部屋にやってきては、ファミコンの『燃えろプロ野球』に興じていました。それも全打席をスコアブックに記録しながらです。そんなある日、田口昇さんは「オレも曲ば作るばい」と言って私のピアノを弾きながら不思議なメロディを歌いました。そのメロディは数日の試行錯誤のあげく「フィリピンの山奥で〜♪ ひゃくさんじゅうなな日〜♪」と歌詞付きの4小節にまで成長しました。
その不思議なメロディが妙に頭にこびりついてしまった私は、その4小節のメロディをモチーフに私なりに展開し、数日の試行錯誤のあげく「フィリピンの山奥でぇ〜♪ ひゃくさんじゅうなな日〜♪」は、「この白い街の雪は〜♪ ぼくと踏むはずだったんだよ〜♪」となり、更なる試行錯誤の末『千歳』という曲が完成します。その事実を田口昇さんに告げることなく密かにレコーディングし、後のアルバム【野球選手が夢だった】に収録しました。
そして90年7月、アルバム【野球選手が夢だった】の収録曲『千歳』を聴いた田口昇さんは、「アンタ、あれ、オレの曲やろうがぁ!」と佐世保弁で怒鳴り込んできました。「アンタ、盗作ばい、人間性ば疑うばい!」と怒りは治まらず、私は「へっへっへ、バレちゃしょうがねぇ」と開き直り、協議の結果、“印税として今後一生焼肉をおごる”ということで示談が成立したのでした。
というわけで、今回の高級おごり焼肉は、『千歳』の作家印税としての当然の報酬であり、今回のサブタイトルに対する謝礼はまだ受け取ったわけではない、というのが田口昇さんの主張です。
この件について、皆さまはどのようにお考えでしょうか。
ワインを飲んで御機嫌な田口昇さんと、シメの冷麺をすする義武くん。 |
あ、遅くなりましたが、先日の鎌倉・鶴岡八幡宮での【鎌倉音楽祭】を、観にきていただいた皆さま、ありがとうございました。
2010/09/03
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