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Friday Column

No.268

『それでも私はモスクワが好き』

というわけで、プチ休暇もあっという間に終わり、プチだったわりには当然のことながら休暇のシワヨセというものはついてまわるわけで、しかも休暇以前に仕上げてしまうつもりだった大きな宿題がまだ終わっていないという状態で、つまり頭の上にどよ〜ん重たいものが乗ったまま忙しい日々を送るという、そんな毎日が続いていますので、今週もアップがやや遅れてしまいまして申し訳ナインハーフ。宿題が宿題なだけに正直煮詰まりまくってますが、今年はなにかと多くのライブイベントに呼んでいただいてますので、精神的にはどうにかうまいことバランスとれると思います。

いやしかし、旅行はいいですよ、えぇ。そんな楽しみがなきゃやってられません。それにしてもモスクワはなにかとたいへんでした。私ひとりで行ったってたいへんなとこですから、母親連れて行くとさらにたいへんなことは想定の範囲内です。なにがたいへんかというと、まず交通機関。地下鉄はガイドブックにも路線図が載ってますから、キリル文字を解読して駅名が読みとれるようになれば、さほど困難はありませんが、市バス、これは難しいです。他の先進都市のような路線図はありませんし、バス停にも何番のバスはどのようなルートで走っているかという表示もありませんから、バスが来たら運転手さんに行き先を告げて、そこに行くかどうかを確認して乗るか乗らないかを決めるのです。ま、これもひとり旅であれば、この作業自体が楽しみのひとつなんですが、今回はそういうわけには行きません。それでも、何回かは乗りましたけどね。バスに乗ったら路線図が貼ってあったので近寄って見ていると、「May I help you ?」とロシア青年が声をかけてきて、「この路線図は古いのでダメですよ、どこにいきたいのですか?」ってことでいろいろ教えてくれたりもしました。


親切にしてくれたロシア青年

で、今回はひとり旅の時にはほとんど利用しないタクシーを多く使いましたが、これがまたたいへんなんですよ、ロシアは。空港から市内へは正規のタクシーに乗れたので良かったんですが、街中はそうはいきません。正規のタクシーはほとんど見かけないほど数が少ないのです。予約をしようとしても「2時間後」とか「今日はだめです」とか言われるのが当たり前だそうで、なのでモスクワ市民は、非合法のいわゆる“白タク”を通常のタクシーとして利用しています。メーターなんてものはもちろんなく、料金はすべて交渉で決定します。道路で手を挙げて車が止まり、助手席の窓越しに一言二言会話してから車に乗り込むという光景を普通に見かけます。なので私たちもそうするしかないのです。

例えばレストランに食事に行こうとホテルを出ると、白タクの運転手さんが「タクシー?」と声をかけてきて、レストランの店名と住所を書いた紙を見せると運転手さんは「7ハンドレッド」と英語で言います。ん、45km離れた空港からこのホテルまで2,200ルーブルでしたから、市内の移動でその額は高いんじゃないか? と思い、一旦ホテルのフロントに戻って「このレストランまでタクシーでだいたいいくらですか?」と聞くと、「私はタクシーには乗らないのでわかりません」と言います。いいですねぇ、さすがロシアのホテルです。再び運転手さんのところに行って、思い切って「400」と言ってみたら「それは、ないよ」という感じで去って行こうとしますから、「わかりました、じゃ500で」ということでやっと乗り込んで出発、といった感じ。値段の相場も距離感もわからないですし、なにしろロシア語話せませんからもう仕方ないでしょう。


ホテルの前で客を待つドライバー

で、食事を終えたレストランの前で「さて、どうするか・・」といった表情で車道を見つめていたら、私たちの場合はどっからどうみても観光の日本人が3人ですから、手を挙げることなく車が止まり、「乗れば」とジェスチャーしてきます。「ガスティニッツェ・ソヴィエツキー、プロスペクト・レニングラツカヤ」とホテル名と通りの名前を言うと、「500」とうので、「じゃぁ、400」ってことで無理矢理握手をして乗りました。同じ距離を往きより100ルーブル値切ったんですから、少しはステップアップでしょう。どっちみちモスクワ市民が乗るよりはかなり高めなんでしょうけどね。そんな感じでイチイチへんなエネルギーを使うんですが、“ボルガ”や“ラーダ” など、なかなか乗ることはできなさそうな、角張ったボロいけどかっこいいロシア車に乗れたのはおもしろかったです。


かっこいいロシア車にも乗れるのさ

で、レストラン、これがまたモスクワはなかなか難しくてですね。たぶん市民の外食率が低いんでしょうね、首都だというのに店数があまり多くはないようです。しかも、ロシア料理店を探すのは更に困難です。でも考えてみたら東京もそうですね。ヘタすりゃ日本料理探すよりイタリアン探すほうが早いんじゃないかと思えます。モスクワもそんな感じなもんで、ひとり旅ならばひたすら歩いて探すんですが、今回はそういうわけには行きませんので、やはりガイドブックに頼るしかないのです。とは言え、電話をしても英語が通じない場合が多いですし、私のロシア語はまだまだClub Tangoの域を抜け出せませんので、電話での予約はちょっと自身がありません。ホテルのフロントでガイドブックを提示して「ここを予約してください」とお願いします。しかし、電話に出ないとか、予約でいっぱいとかが続いたりするもんですから、フロントの人に「どこかロシア料理のレストランを知ってますか?」と聞くと、やはり「私は知りません」だったりします。

今回のホテルは一応高級の類に入るんですけどね。過去4回のモスクワで5軒のホテルに泊まり、その中で最も気に入ったのはソ連時代の古く重厚な建物の超老舗【Hotel Sovietsky】。中は天井が異常に高く、ロビーも客室の廊下も美術館のように趣があります。が、サービスは楽しいくらいにソ連時代のなごり満載。アメリカ資本の有名ホテルだったら、ちゃんとレストランを紹介してくれて、予約を入れて、タクシーを手配して料金交渉までしてくれるんでしょうけど、それはそれで逆につまんなくなちゃいますから。郷に入れば郷ひろみ。ロシアに来たらロシアのホテルに泊まるほうが、多少不便でも楽しいのです。ってゆうか、モスクワのホテル、めちゃくちゃ高くなりましたから。どこも10年前の約3倍、パリより高いんじゃないかと思います。という意味も含めて【ソヴィエツキー】はやはり正解だったと思いたいのです。


まるで美術館のようなホテル・ソヴィエツキー

で、ガイドブックに載ってるロシア料理のレストランに何軒か電話してもらってやっと予約が取れて、さぁ、タクシーという流れですから、そりゃ疲れますわね。母もクタクタです。でも、「来るなんて考えてみたこともなかった」と言うロシア・モスクワに母を連れてきた、ということ自体、充分有意義だったと思います。


やっとたどり着いたレストラン“Kvas”

ね、たいへんそうでしょう。それでも、楽しいんですよ、モスクワ、私は大好きです。なにがいいんでしょうかねぇ。みんなキビシイ表情してあまり笑わないんですけど、実はやさしいんですよ。今回は基本的な観光コース。【クレムリン】を見て、【赤の広場】と【レーニン廟】はなぜか入れなくなってて残念でしたが、レーニンやスターリンやニコライ2世のそっくりさんと写真を撮って、モスクワ川の遊覧船にも乗りましたし、赤かぶのスープ“ボルシチ”もロシア式水餃子“ペリメニ”も“小羊のグリル・赤スグリのソース”も食べましたし、3日目の晩は【スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念国立モスクワ音楽劇場】というところで、チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』を観ました。

先週書いたとおり私のカメラはぶっ壊れましたので、これらの写真はどれも私の撮影ではありませんが、モスクワの写真をダッと並べますので、是非行ってみたくなってください。でも、ビザ要りますよ。


 

 


 


 


ロシア語をカタコトレベルまで持っていきたいと思ったまま、ちゃんと勉強することなくもう4年くらい経っちゃったような気がしますが、そろそろ本気でやんなきゃなぁ、とツーカンしながら、来週はボローニャです。

2010/07/02



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