No.195
『いとおかやし』
さぁ、やってきましたよ、NHK-BS2『あなたの街で 夢コンサート』、長野県岡谷市のカノラホールでの公開録画。今回はそのことについていろいろ書きたいと思います。
その前に、1月31日は都内で東京フィルハーモニー交響楽団のみなさんとのリハーサルでした。自身で編曲した『愛は勝つ』のフルオーケストラでの演奏を初めて聴ける日です。編曲家の丸山和範さんと指揮者の岩村力さんと譜面を見ながら曲の中身の打ち合せをして、さぁ、いよいよその演奏を聴きました。
うん、予想どおり、というよりは、予想の範囲内と言ったほうがニュアンス的に近いでしょうか。というか、リハーサル室の壁が音を吸収するいわゆる“デッド”な部屋だったので、全体の響きが事前の私の脳内イメージよりはサラッとしてたという印象と、オーケストラの中央の指揮者の前のピアノに私は座って、その演奏を聴きながら歌うもんですから、当然のことながら至近距離にいる第一バイオリンの音が直接的に耳にくるわけで、比較的遠くのコントラバスや、もっと遠くのトロンボーン、チューバなどの低音系の音があまり聴こえず、雰囲気がつかみにくかったかなぁ、という印象がありました。そりゃそうですよね。これまでの私は、ドラムとベースのリズムを基本に演奏し、歌ってきたわけで、しかも足元のモニタースピーカーでそれぞれの音量・バランスは好きなように調整してもらえるわけですから。そんな私が初めてオーケストラと演奏するんですから、最初っからその音をうまいこと聴けなくてもしかたないでしょう。まぁ、でもとにかく私のアレンジがイメージの範囲内だったということでこの日はひと安心です。
で、2月3日公開録画当日。新宿から特急電車に乗ることを考えると、車で行っちゃったほうが楽かなと考え、自慢の高級北欧車でぶっ飛ばすことにしました。朝08:45に出発、途中コンビニによったり、わざと道を間違えたりしながら調布インターから中央自動車道に乗ったのは09:45。高速に乗ったはいいがふと気づくと油量計がもうほぼ【E】(=Empty=空っぽ)を指してたもんですから、サービスエリアで給油しなければならないんですが、しばらくして出てきた案内板では、給油可能なサービスエリアは【談合坂SA】、36km先です。36km持つかなぁ、ほんの13ヶ月前に“人生初ガス欠”を経験したばっかですし、よりによって高速でガスケツこいたらシャレにならんよ、と思ったところでどうしようもないんでただただ走り。で、難なく【談合坂SA】に到着し、ハイオク満タン給油して【岡谷IC】を目指します。
はい、中央自動車道を2時間ぶっ飛ばして11:45、着きました。地図でみると長野県のど真ん中に位置する岡谷市です。岡谷に着いた以上、まず私がやるべきことは岡谷のラーメンを食べることです。ってゆうかそこが何県の何市であろうと、私の場合はラーメンを食べるのです。事前にインターネットで「岡谷市 ラーメン」と調べてみたんですが、こんなにラーメン情報が少ないところもめずらしいな、というくらいあまり出てきませんでした。それはある意味・逆に・ある反面、迷う必要がないということで、岡谷ICから5分のところにある『親ゆづりの味 一番』と、街の中心部にある『来々軒』の地図・写真・メニューをプリントアウトし、同行スタッフ(西口くんと近藤くん)2名と道中協議した結果、私は「やっぱ『親ゆづリの味 一番』でしょう、ロケーション的にも」なんですが、同行2名は「『来々軒』じゃないっすかねぇ、なんとなく」とやんわり意見がわかれ、とりあえず岡谷ICに近い『親ゆづリの味 一番』の店構えを見てみて考えようということになり行ってみました。塩尻峠に向かう坂道の途中でやや高くなっているので街が見渡せそうですし、昭和40年創業ってのもいいじゃないですか。私は迷わずココなんですが、西口・近藤ともに「『来々軒』にしません、ねぇ、なんとなく」という反応です。「なんだよ、なんだよ、その歯切れの悪さは。ここの何がダメなのよ、まぁいいや」ってことで、外観の写真だけ撮って再び車に乗り『来々軒』に向かうことにしました。
ところでこれをお読みの皆さん、『来々軒』って書く時、皆さんのパソコンは一発で『来々軒』と変換されますか? 私の高級ブック型コンピューターは「らいらいけん」と入力して変換すると『来来券』と出てくるもんですから、その1文字目だけを残して、次に「ささき」と打って『佐々木』の「々」だけを残して、でもって「けん」と打って「県/圏/券」のあとに「軒」をみつけて選択して、やっと『来々軒』ですよ。と、そんな作業をここまでもう7セットやってます。
ってゆうか「々」って文字、皆さんはどうやって出しますか。私は「ささき」と打って「佐々木」に変換して両端をカットするしか考えつかなかったんですが、よく考えりゃ「佐々木」じゃなくてもいいんですよね。例えば「日々」だったら、キーボードを叩く数は「sasaki」の6に対して4で済みますし、「sasaki」のように両手を使わず「hibi」なら右手だけで入力可能です。それでも敢えて「sasaki」と打って「佐々木」にして両端をカットすることを繰り返すうちに「佐々木」という姓にほのかな親近感を持ちはじめ、そのうちどこかで「佐々木」さんに会った時には、それが初対面だとしても、「あぁ、佐々木さん、ときどき打たせてもらってます」ということになるんだったらそれはそれでいいんじゃないでしょうか。ところで、そんな佐々木の真ん中の「々」を佐々木さんの力を借りずに一発で出す方法ってあるんですかね。だいたい「々」って、単体だったら何と読むんですか。
さ、やっと話を戻して中央町にある『来々軒』にやってきました。街の真ん中の真っ昼間だというのに、通りに人が歩いてませんでしたが、店内はお客さんでいっぱいでした。こちらは昭和22年創業。ラーメンは極めてスタンダードな鶏中心の透明黄金色スープに中細縮れ麺。おいしかったです。おいしかったんですが、なんというか“わざわざ岡谷市に来た感”がないっちゃないわけで、やっぱり『親ゆづリの味 一番』で岡谷の街を見下ろしながら食べるべきではなかったのか、とほじくりかえしたりもしました。
13:00、予定どおりに【カノラホール】に到着。司会の渡辺徹さんとは実に17〜8年ぶりくらいの再会です。14:30からリハーサルをきっちりやって、16:00からは本番どおりの進行での通しリハーサル、これを“ランスルー”と言うんですが、なぜかこの“ランスルー”という語が私の耳にはどことなくエッチに響くんですが、やはりこれも私だけでしょうか。
さて、18:30公開録画開始です。まずは自身でアレンジし、丸山和範さんに若干修正していただいた『愛は勝つ』。“ううう、今私はすごい経験をしている”と実感しながら演奏しましたが、どうだったんでしょうか。そういう意味では、編曲が済んだ時点で私自身のひとつな大きなヤマが終わってるので、本番ではキッチリ歌唱することに専念したわけですし、岩村力さん指揮の東京フィルハーモニー交響楽団ですから、演奏のレベルは極めて高いはずですが、“編曲”自体がどうだったのか。これは自分ではわかりませんでした。
丸山和範さんに編曲していただいた『世界でいちばんす〜〜』は素晴らしい編曲でした。余計なことはせず、しかし要所要所でさりげなくなにかをチラつかせる感じは、さすがプロだなと思えるものでした。それに比べて私の『愛は勝つ』は、46歳ながら若気のイタルタス通信的アレンジだったのではないか、という感触が残っていますが、どうあれ番組の完成を待って、譜面を睨みながらヘッドフォンで繰り返し聴いて、どこがどうだったのかをじっくり省みてみようと思います。皆さまは是非オンエアーを御覧いただき、判断してください。いやぁ、それにしてもこれからの私の音楽活動に於いてたいへんに重要な経験であったことは事実です。いったいどんな編曲をやれるのかもわからない私に、それをまかせてくれた番組制作の皆さんにも感謝します。
で、思ったんですけど、やっぱ指揮者になりたいですね。ううん、やはり音楽家として最高峰だなと思えます。でもなぁ、編曲は必死こいて譜面書けばなんとかなりますが、指揮ってのはまた別次元でしょうね。音楽的なことはもちろん、人間的に尊敬されなければ、演奏者もついてこれないでしょうし、大人数のオーケストラを仕切るだけの人間的“うつわ”というか人望、それありきで初めて指揮者でしょうから。そこですよ、私にとっての問題は。とまぁそんなことも含めて岩村力さんは素晴らしい指揮者なのだな、と思いました。
20:00、公開録画が終了し、一旦ホテルに戻って、近くの居酒屋さんで打ち上げです。なんか、みなさんに妙に褒められて褒められてねぇ、私の性質上、褒められれば褒められるほどなぜかお尻を出したくなるんですが、堪えました。司会のNHKアナウンサー・鎌倉千秋さんとは意外にも共通の趣味が多く、中国語を勉強しているとか、マイケル・ジャクソンが大好きだとか、いろいろ話し込みました。今回の出演にあたりこの『金曜コラム』もちゃんと読んででいただいたようで、すでに“お気に入り”に登録してくださっているそうです。ステキな女性ですね。というわけでビールがばがば飲んで日本酒ちびちびやって、ホテルに帰って寝ました。
さ、翌朝です。ホテルの部屋からは諏訪湖が見えました。西口くん近藤くんは忙しがって電車で帰りやがりましたが、せっかく長野県岡谷市まで来たのに、帰りは高速飛ばしてまっすぐ東京帰っちゃうような私ではありません。いろいろと寄り道すべき場所があるのです。人生とは遥かなる寄り道の繰り返しのそれなのです。というわけで来週は、岡谷からの帰路のあっち行ったりこっち行ったりを、写真たっぷりで書きたいと思います。
2009/02/06
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