No.145
『移動しまくる移動日 〜神戸の巻〜』
もう1週間も前の話ですが、2月15日(金)は神戸公演の前日、大阪からの移動日でした。移動日というのは文字通り“移動”するだけの日なんですが、移動つったところで大阪から神戸ですから、ホテル・ツー・ホテルでもジャンボタクシーでほんの40分、途中でラーメン食べたところで1時間ちょいで着いちゃいますから、さて、あとはどうしたものか。優秀アーティストだったら、ホテルの部屋にこもって作詞とか作曲とかしたりするのかもしれませんが、私の場合そのへんあんまり優秀ではないもんですから、優秀でないなりにどうするべきか考えます。移動日だというのに大阪から神戸に移動して来たくらいで「はい、移動完了」と満足してしまうのは、与えられた仕事しかしないやつみたいでイライラしますね。やはり“移動日”なんですから、もっともっと移動できないものかと考える、それがポジティブな移動日なんじゃないか。よしわかった、夕食までの数時間、移動し続けよう、それでこそ“移動日”だ、という結論に達し、移動しまくることにしました。
ホテルのフロントで神戸の市街地図をもらってながめると、おう、ロープウェーが3本もあるじゃないですか。しかもうちふたつはケーブルカーとロープウェーのセットじゃないか。よしこれだ!ということで、“ケーブルカー”と“ロープウェー”を“はしご”するという、とてつもない上昇志向で市バスに飛び乗り10数分、『摩耶ケーブル下』に到着しました。
階段を上りケーブルカーの駅に行くと、ホームにはケーブルカーが停まっているものの人の気配はなく、やってんのか?という雰囲気で切符売り場の小窓をのぞくと、脇から「なんですか?」と男性職員登場。「やってます?」と聞くと「やってます」ってことで切符購入。ケーブルカーとロープウェーのセット往復で1,500円、思ったより高いですね。それにしても「なんですか?」ってこたぁないんじゃないですかね、まぁいいんですけど。ケーブルカーは毎時00分・20分・40分発ってことで、駅のスタンプをノートに押したりしながら次の発車まで10分ほど待ちます。
・・・寒い。そりゃそうだとホカロンを背中に装着していると、「ただいまより15:40発、虹の駅行きの改札を行います。ご乗車のお客さまは改札口へお越し下さい」とアナウンス。どうみても至近距離にどう考えても私ひとりしかいないのに、さっき「なんですか?」って言ってた人がわざわざマイクでアナウンスってのがとてもイイ感じでした。昭和30年代製造と思われる鉄製のガッチリ冷えきった車両に乗り込むと直後女性運転士がやってきました。女性運転士に客は私ひとり、ううん、ほぼ完璧なシチュエーションじゃないかと思っていたら、発車寸前に40〜50代と思われるサラリーマン3人が駆け込みゲットオン。車内でお互い写真を撮り合ったりしてしてますからどうやら観光サラリーマンみたいです。だとすると私は観光ミュージシャンです。
明らかにエレクトーンで録音されたと思われる緩く軽快でやや不愉快な音楽と甘く浮ついたアナウンスが流れ、ほんの3分でケーブルカーは『虹の駅』に到着。ここでノートにスタンプ押して、そこからちょろっと歩いて今度はロープウェーの『虹の駅』から更に上を目指します。ここでもノートにスタンプ押して10分待ってロープウェー発車。乗客は引き続き観光サラリーマンズと私の4人。ロープウェーではマイクを持った案内嬢の“ございます系”アナウンスを期待したんですが残念ながら無人運転。これまたエレクトーン系の音楽とアナウンスが流れ、5分で『星の駅』に到着し、ここでもスタンプ。標高692m、星が手で掬えるという名の『掬星台』から見る夜景は日本三大夜景といわれてるそうで、暖かい季節の夜には恋人たちやヤンキーの皆さんでさぞにぎわうスポットなんでしょうが、この日はあちこちに雪がブリブリ残るたいへんに寒々しい状況です。観光サラリーマンズと私は、それぞれ干渉することなくちょっと離れた場所で写真など撮ります。
で、私はすたこらさっき乗って来たロープウェーで退散することにしました。だってなにしろ寒いんですから、体感推定気温は1℃。コラムのネタ拾いに来たはいいけど風邪ひいちゃいましたなんてのはシャレになりませんから。ここでも客は私ひとりだっつうのに大げさな音量の改札開始アナウンスに促されてロープウェーに乗りました。どこにいたのか杖をついたハイキング老紳士が乗って来て「あっちが大阪ですか」「あれが関空ですかね?」「いやぁ関空はもっと向こうのほうでしょう」「じゃぁあそこは南港ですかね」「あぁそうだ南港だ、WTCとかATCとかがある、ね」なんて感じで『虹の駅』まで5分。ここで10分待ってハイキング老紳士とともにケーブルカーで下まで降りました。
当初のイメージ計画ではこのあと『六甲ケーブル&ロープウェー』に“はしご”という上昇志向だったんですが、この寒さの中でのいちいち微妙な待ち時間はツライだろうってことで上昇志向はあっさり中断。さてどうしようか。こういう観光をやってるとやっぱあの、カキワリに丸い穴が空いててそこから顔出して写真撮るアレがあることを期待してたんですが、摩耶にはありませんでした。そうだ王子動物園に行けばその手のカキワリがあるかもしんない、とは思ったんですが、もう4時半も過ぎてますし、今から動物園行っても入った瞬間ラストオーダーみたいになっちゃってもイヤだしなぁ、なことをあれこれ考えたあげく“神戸と言えば灘高校”に行ってみることにしました。しかし、ホテルでもらったバス路線図は神戸市交通局のもので市営バス以外の民間業者路線が載ってないこともあってか、摩耶ロープウェーからたしかJR住吉駅付近にある灘高校あたりまでのスムーズなバス路線を見つけられず、えぇぃめんどくせぇ、タクシー乗っちゃえ、カネならあるんだぜ、ってことでタクシーに乗って「灘高校までお願いします」。
そう神戸と言えば“灘高校”なんです、私の場合。中学時代に組んでいたビートルズのコピーバンド『ミートルズ』のメンバー4人のうち私を含む三人は志望校を福岡県立城南高校に揃えましたが、ベースの小野直樹くんだけは神戸の灘高校に行くと言い出し、それではミートルズが存続できないということで3人でむやみに説得しましたが、ガリ勉秀才の小野直樹くんは見事神戸の灘高校に行ってしまいました。3年後、小野直樹くんは東大に入り、そのあとアメリカかなんかに留学して今はどっかの大学でなんか難しそうなことを教えてるそうです。そういや高校時代にほんの一時期だけ家に来ていた家庭教師さんは九大の理工学部生でしたが、あの人も灘高校出身だったなぁ。そうかオレは家庭教師がついてた時期もあるお坊ちゃんミュージシャンなんだなぁ。
なんてことを思いながら窓外をながめていると「神戸屋レストラン」を発見。“神戸の神戸屋”うぅぅこれは、この時間にパンは食わないとしても写真だけは撮っておいたほうがいいような気がして「運転手さん、ここでいいです!」と急遽タクシーを下車。神戸の神戸屋だよぉ、なんかうれしいなぁ、と写真を撮りました。後で調べてわかったことですが、東京南西部に多く店舗があり私も学生時代からハンバーグやらビーフシチューやら好んで食べ、今でも時々バゲットを買ったりしている「神戸屋」は実は神戸ではなく大阪の会社で、しかもなんと神戸市に存在する「神戸屋」は偶然見つけたこの「御影店」一店のみだったのです。すごいでしょう。
神戸唯一の神戸屋レストラン |
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住吉台くるくるバスは200円 |
改めてバス停を探していると「住吉台くるくるバス」と書かれたバス停を発見。“くるくるバス”とは一体なんなのか、くるくる回転しながらやってくるのか、と期待で胸をCカップにして待っていると、小型のバスが普通にまっすぐやって来たので乗りました。ほんの数分でJR住吉駅に到着。ここから灘高校への行き方を尋ねようと交番を探しましたが見渡す範囲にはなく、えぇぃめんどくせぇ、タクシー乗っちゃえ、カネならあるんだぜ、ってことで再びタクシーに乗って「灘高校までお願いします」。そしたらほんのワンメーターで着いちゃいました。そうかぁ、ここが灘高校かぁ、という特別な感慨もよく考えりゃあるわけもなく、記念撮影用のカキワリなんかもあるわけもなく、“ここに来た”という事実だけを胸に表通りに戻り、たまたまやってきた阪神バスで三宮駅へ。
三宮駅に着いた時にはもうすっかり日も暮れてお腹もすいたので、市営バスに乗り継いでホテルに戻りました。というわけで、市営バス・ケーブルカー・ロープウェー・ロープウェー・ケーブルカー・タクシー・くるくるバス・タクシー・阪神バス・市営バスと多種の交通手段を駆使して移動しまくった神戸の“移動日”はこれでおしまい。夜はみんなでカジュアルなイタリアンレストランでワイン飲んでさらっと帰ってさっさと寝ました。
翌16日午前中、しつこくカキワリ目当てで王子動物園に行ってやろうと思って起きたら窓の外はブリブリ雪が降っていたのであっさり中止。そして、神戸オリエンタル劇場でのライブ。私としたことが1曲目ド頭の歌詞を思いっきりすっとばしてしまうという大失態をさらしてしまいました。ホント申し訳ない、ごめんなチャイナタウン、こめんなチャイナドレス、ごめんなチャイナエアライン(ひたすら平謝りのイメージ)。と、そんなことも含めてお楽しみいただけましたでしょうか。観に来てくださったみなさん、ありがとうございました。
2008/02/22
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