No.083
『はからずも富山 episode 2 : White on White』
※このコラムはツヅキモノです。No.082からの流れでお読みください。
そして“次”の機会は早くも14ヶ月後にやってきました。今年10月、入国ビザ発給不可でトルクメニスタン行きを断念し、行き先を変更してのウラジオストック/イルクーツク旅行の乗換経由地として関空・新潟・富山の3ルートがあがった中、発着曜日が最も好都合という理由で富山に決定。往路復路の2度、富山空港で計4時間を過ごすことになりました。
富山空港はすごいですよ。なにがすごいって日本唯一の河川敷空港なんですから。そして更にすごいことに、搭乗手続きを済ませて出発ロビーのある2階へのエスカレーターを上がるといきなり目の前に『くすりの富山』が現れます。このロケーションは国内外他のどの空港でも経験したことがありません。「これからウラジオストック、薬を買っておかなければ」という気持ちにさせられ、都会のドラッグストアでは見たことのない個性的な“くすり”が並ぶショーケースを見てみます。ネーミングとパッケージデザインにぐっと心を掴まれ『かぜピラ』を買いました。うぅ〜ん、かぜがピラっと飛んで消えていくイメージなのだろうか、それにしてもこの獅子舞はなんだ、飲むと縁起もいいってことなのか。他にも魅力的な薬はたくさんあり、おみやげにもっと買っておくべきだったと後で悔やみました。
そんなことはさておき、私には去年ここ富山空港で宣言したとおり“白いカレー”を食べるという大きな課題があったのです。レストラン『エレガ』の前に来てショーケースを眺め“白いカレー”の存在を確認するものの、うぅ〜ん、どうも今これを食べる気がしない。しかもすぐ隣にはうどん屋さんがあって出汁のい〜い香りが暖簾をゆらゆらさせながら漂ってきます。時間はまだたっぷりあるので空港ビル内を意味もなく端から端まで1往復して気分を仕切り直します。しかしこれからロシアに行き9泊10日は日本食が食べれないと思うと、やはりここはうどんを食べておいたほうが健康面でも安心なのではないかと考えながら、ふと気がつくともう身体は隣のうどん屋さん『とみいち亭』にすいこまれていました。メニューのラインナップはごく普通のものだったんですが、「氷見うどんは+200円」とあり、それはなにかと尋ねると「こっちのほうのおうどんなんですよ、ちょっと細くてね、おいしいですよ」ということだったので“うどん刑事”でも何でもない私でも食べないわけにはいきません。氷見とかいて「ひみ」と読むこのうどんに生卵を入れて「氷見の月見うどん」を食べました。稲庭のようなそうでもないような、さらっとつるっとおいしかったです。
それでもまだ出発までには時間があるし、天気もよかったので展望デッキに出ることにしました。すると、おっ、ここにもありました“モラルのゲート”。大人100円・小人50円という料金設定でありながら、何をもって大人か小人かを判断するのは個人の価値観にゆだねられるという“モラルのゲート”です。(この辺りのつっこんだ記述に興味がある方はコラムNo.041 をお読みください)。この日の私はたったひとりで言葉も通じないロシアへ旅発つもう44歳の立派な大人なので潔く100円玉を投入、大人用ゲートを堂々通過し、出発までの数十分を展望デッキでぼ〜っと過ごしました。
ここでスパッと話は飛んで10日後、ロシア旅行から帰国して再び富山空港。当然「あぁぁ〜、うどんとかラーメンとか食いてぇ」という状態ですが、私には今度こそ“白いカレー”を食べなければならないという避けられない使命がありました。レストラン『エレガ』の前に来てショーケースを眺めてもどうもやはり“白いカレー”食べる気になれません。そこに、おっ、“白海老かき揚げ丼”というものをみつけました。・・そう去年夏、スタレビュ野外コンサート終了後の打ち上げで生の白海老を食べて、どっちかっつうと“かき揚げ”とかで食べてみたいと思っていたそれがあるではないですか。なおさら“白いカレー”を食べる気が萎えてしまいます。うぅぅ〜ん、しかしここで“白いカレー”を食べなければ2年越しの腰抜けグルメです。再び隣のうどん屋さんにすいこまれないように腹をくくってとりあえず『エレガ』に突入。メニューを開き目に飛び込んで来たのは新商品“白海老かき揚げカレー”!?。う?これか?これでいいのか?いや、待てよ、うぅぅぅぅ〜、なんかわからんくなってきた。一旦閉じたメニューをもう一度冷静に見ると、白海老かき揚げがのるのはいわゆる普通のビーフカレーのみで、“白いカレー”の白海老かき揚げのせはメニューにはありません。注文を取りに来たウェイトレスさんにもうすっかり判断能力が低下した状態のままやぶれかぶれで「白海老かき揚げののった白いカレーはないんですか?」なんてことをついうっかり尋ねてしまうと「できますよ」とあっさり即答。流れで「じゃ、それお願いします」なんて言ってしまいました。そんなこんなで果たして目の前にメニューにもない超新商品“白海老かき揚げ白カレー”が登場しました。
うぅぅぅん、どうなんでしょう。判断能力が低下した状態にもかかわらずメニューにないものを注文した私がいけなかったのかもしれません。でも一応がんばって全部食べましたよ。ここに至るまでの道のりは私なりにいろいろあったとしても、たった一度のこのひと皿で“白いカレー”を語るにはまだ早すぎます。次回もう一度、・・いや、私はもういいかも。ここはひとつこのコラムをお読みいただいた皆さんがいつか、はからずも富山空港に行く機会があった時にきっと食べていただきたい。最近はレトルト商品も発売されている“白いカレー”。一般的にその発祥は北海道とされているようですが、88年から正味15年、毎週札幌に通い続けている私の経験では、スープカリーは確かにずっと前から札幌にあり10年ほど前は私もよく通った時期がありましたし、クリームシチューを白い御飯と一緒に食べるという常識が札幌にあることも知っていますが、しかし、“白いカレー”が北海道にあったなんてのは初耳ですし、実際札幌では未だに見たことがありません。そんなこともあり私は提案します。このコラムをお読みの皆さん、“白海老かき揚げ白カレー”を新たな富山名物にするべく、富山空港に行った際には是非、いや、なんか理由を作ってでも富山空港へ行って食べてみてください。そして「こないだ、富山行ってさぁ、初めて“白海老かき揚げ白カレー”食べたよ」と楽しそうにお友達に話してください。「何それ?」と聞かれたら「知らないのぉ〜」と言ってやればいいんです。富山県のみなさんがコレを読んでどのような意見を持つかについてはこれからの話し合いです。というわけで富山県のみなさん、あらためましてよろしくお願いします。
最後に下の写真は06年10月22日のお昼前、ウラジオストックからの帰国直後、“白海老かき揚げ白カレー”を食べる数十分前に空港の正面で撮影したものです。おそらく富山の「T」をモチーフにしたであろう金属のオブジェの下部に写り込んでいるのが私です。どうでもいいっちゃいいんですけど、時計は合わせといたほうがいいですよねぇ、・・空港だし。
2006/12/15
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