今回は休暇旅行のロシア・ウラジオストック/イルクーツクのことを書こうと思っていましたが、スライド用フィルムで撮った写真の現像の上がりが木曜日になるので、そこから写真を選択するには時間的にちょっと無理がありますので、イルクーツクからのローマ字コラムがうまく送れなかった場合のために予備に書いていたコラムをお読みいただきます。
No.076
『ピロジェクトX 〜丘の上でピアノが歌った〜』
ツアー終了直後、休暇旅行直前の10月11日、足やペダル部分を取り外しても優に300kgはあるグランドピアノを小高い丘の上まで運ばなければならない、そんな大きな仕事が男たちに課せられたのです。知恵を絞り、力を合わせ、大きな仕事を成し遂げた9人の男たちの感動の物語です。
トラックが入れる場所から目的の丘の上までは直線距離で約120m。鋪装された場所であれば台車に乗せて転がして行けばなんてことない距離ですが、ここは芝生。トラックも台車も入ることが禁じられています。しかも一旦斜面を下がって、そのあと勾配を上るという、単純ながらも厳しい条件。もう10月半ばだというのにこの日の気温は25度を越えていた。布団でくるんで木材を組み合わせた台上に何本ものベルトでがっちり固定されたグランドピアノの本体をトラックの荷台から下ろし、4輪キャスター付きの台車2枚の上に乗せます。この台車のまま芝生上を転がそうとしてもピアノの重量で車輪はあっというまに土にめり込み進めなくなるでしょう。
ピアノハンズの兼井さんの先導で、3枚の合板を順繰り順繰りにつなぎ合わせながらその上をピアノの乗った台車を少しずつ少しずつ押し進めるというわけです。ピアノが滑り落ちぬよう下り斜面では上に上に引きながら下ろし、少し進んでは止まり、通り過ぎた板を進行方向に継ぎ合わせてまた進み、上り斜面ではとにかく押し、下から支え、少し進んでは板を継ぎ合わせる作業をくり返しながら上ります。
ピアノは・・抵抗した・・。 板が・・・軋んだ・・・。 吹き出す汗が・・・芝を・・・濡らした・・。
↑これ一応プロジェクトX風のイメージです。 そんな作業を繰り返し20分くらいかかったのでしょうか、ついにグランドピアノは目的の丘に立ちました。
風が・・吹いた・・・。 丘の上で・・・ピアノが・・・歌った・・・。
↑何度も言いますが一応プロジェクトX風ですよ。
で、もともとそれは何のための作業だったかと言うと、11月末にアルバムからリカットするシングル『世界でいちばん好きな人』のジャケット撮影です。広い気持ちいいところで撮ろうということで、デザイナー・片山さんやカメラマン・大川さんがロケ地を探し、千葉県のある気持ちい〜い場所での撮影だったわけですが、あまりに気持ちんよかったんでどうやってピアノ運ぼうかってことまで考えてなかったというか、どうにかなんだろうと思っていたというか、そんな感じで現場に行ってみて、「じゃぁ、ここにピアノ置きましょう」というポイントを決めたいいが、「ところでどうやって運ぶと?」ということになり、みんなでシーンとしていたところに、いつもいろんな時にピアノをお願いする“ピアノハンズ”の兼井さんが一言「これだけ男いりゃぁ、運べるっしょぉ」。デザイナー・片山さんもカメラマン・大川さんもヘヤメイクの冨田くんも、レコード会社・相澤さんもアップフロント・塚原さんも逃げるわけにいかなくなり、まったく想定外の重労働となった、というわけです。
で、撮影後またグランドピアノをトラックに戻すという作業が待っていました。兼井さんは「よし、ソリみたいに滑らすか。さっきソリやってる子供いたし」と軽く言い切り、ピアノを固定している台にそのまま合板を一枚を敷いてベルトで固定し、草を上を押して滑らそうというのですが、さすが専門家です。これがかなりの名案で、そりゃめちゃくちゃ重いことには変わりないんですが、往路よりは半分くらいの分数でトラックの場所まで戻ってきました。
というわけで、どのようなジャケットの出来上がりかもなんとなく想像していただきながら、新しいシングルを御期待いただければと思いました。
私? 私は逃げますよ。写真撮ってました、何枚も。重要ですよ、それだって。だってぇぇぇ〜、タレントさんなんだも〜ん、手ぇ痛めたりしちゃいけないんだも〜〜〜ん、うぅぇぇぇぇぇぇ〜〜〜ん(泣き)。
2006/10/27
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