No.014
『口パク禁止令』
先週10日の朝日新聞朝刊アジア面に“「口パク」禁止条例”という記事があり読んでみると、“中国政府は、歌手がコンサートなどで実際には歌わずCDなどを流す「口パク」行為を禁止する条例を来月から施行する。”という内容でした。
一般的に“インチキ”というイメージがある「口パク」。私もステージではこれまでに「インチキ・スチールドラム」「ニセ・トランペットソロ」「弦無しギター」に「ニセ・タップ」など、数々のインチキ演出を効果的に遂行してきましたが、さすがに「口パク」はやったことないですねぇ、まだ。
でも、「口パク」やる側にはやる側の理由がちゃんとあるわけですよね、きっと。最も意地悪く想像しやすいのは、レコーディングでは何度も歌っていい部分だけを切り張りして繋げてなんとかカタチにしているけど、生で歌っちゃったらとてもじゃないけど聴かせられたもんじゃないよ、という歌唱力的理由ですかね。最近じゃそんなかよわいタレントさんも希少な存在でしょう。
その他の口パク理由もいろいろ考えられます。契約&裁判社会アメリカの一流どころになると、テレビなどに出演する際、実際に歌うか口パクかでその出演料が1桁違うなんて話も聞いたことがあります。桁違いの出演料だけではなく、実際に歌う以上完璧な音づくり・ミキシングでのオンエアーを契約書上に要求される番組制作側は、そんなに言うんだったら“お得な口パクコース”でお願いします、ってことになるんでしょうかね。一概に“口パク=インチキ”というわけではないケースもあるようです。
話がちょっとズレますが、我らが KING of POP =マイケル・ジャクソンさんのコンサートなんかは、歌はうたっているものの、バンドの演奏の殆どはコンサート用に特別に録音されたカラオケのアテブリ説が昔からあります。なにかにつけてなんやかんや言われ役のマイケル・ジャクソンさんに関する噂ですから真偽はわかりませんよ。でももしそれが本当だったとしても、それ相当の理由があるのでしょう。だって、すんごいですよ、コンサート。さっきあったセットは舞台床もろともガァ−ッて上にあがっちゃって、その後ろから別のステージセットがスライドしてきて、上から降りてきたロケットに宇宙服で乗りこんでシュバーッて飛んでったと思ったマイケル・ジャクソンさんが数秒後にはぜんぜん別のとこから別の衣装でクレーンに乗って出て来たり、と、コンサート中に何度も舞台セッティングがごろんごろん変わるんですから。そんな中でいちいち真面目に生演奏やってたらもう演奏者側はトラブリまくりの嵐でしょう。しかも、東京ドームみたいな、電気系統とかいろんな設備がちゃんとしてそうな会場だったらまだしも、世界中いろんな国の野球場やらサッカー場やら、へたすりゃなんもないだだっぴろい空地に一からやぐら組んでみたいな、いろんな状況下であの大規模なショウをやって廻るわけですから、演る側にとっても観る側にとっても最も安全確実にショウを成功させるためには「カラオケ」ということになったとしても当然ですし、途中でマイケル・ジャクソンさんのダミーが口パクで歌ってたとしても、それはもうコンサートというよりは、もの凄いアトラクションと解釈するべきで、それに関してカラオケ・口パク論争をすること自体がちっぽけでヤになっちゃいますよ。
話もどして中国の口パク禁止条例の記事。“歌手や芸能人団体に対して、2年以内に複数回違反したら活動免許を取り消す規定を明記した。中国政府は「口パク」鑑定技術の向上に努める方針だ。(人民日報)”・・・ですよ。「活動免許」という響きも北京っぽくて好きですが、「口パク鑑定技術」というのにもめちゃくちゃ興味がわきますね。どんな鑑定技術をどのように向上させるんでしょうか。口パクやるほうもやるほうで口パク技術=“パクテク”を向上させるために、必死で口パク練習=“パクリハ”やっちゃったりして。
うぅ〜ん、なんだか“口パク”という行為に意味不明の魅力を感じてきました。しかも私の大好きな中国で“禁止”ですから、その魅力はさらに倍です。私もいつかライブの微妙な演出に取り入れてみたりして。 ・・・みたりして、ってホントにやりますからね、私の場合。
では、ここで問題です。
「口パク」禁止条例を施行する中国の共通語・北京語では「口パク」のことをなんと表現するのでしょう。次の3つの中から選び、その発音をイメージしなさい。
1.対口形 2.没唱儿 3.口把克
※ 正解は次の次のコラムのケツあたりを御覧下さい。
2005/08/19
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