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Friday Column

No.024

『ジビエの季節 〜旨いというよりおもしろい〜

先日、すごく久しぶりにフレンチを食べに行きました。考えたらまともにフレンチを食べたのは去年夏の帰国後初めてかもしれません、うん、そうだ、ってことは約15ヶ月ぶりです。93年から“これからオレはワインを飲むぜ”と独りワインブームを開始し、翌94年くらいから東京や札幌でフレンチレストランをちょろちょろ食べまわるようになってから以降、15ヶ月間もフレンチを食べなかったのは初めてのことです。ま、そのくらいフレンチを食べなくてもぜんぜん平気ってことなんでしょう、日本人だし。とはいえ2年半住んでいたパリでは、普通にもの食えばそれは基本フレンチなわけで、スーパーにいくと仔牛・仔羊・鴨・七面鳥などが牛・豚・鶏と同じ扱いで並んでいて、煮たり焼いたりいろいろ食べました。もちろんレストランも大好きですからいろいろ行きました。私のようなワイン好き、西洋料理好きにとってパリは巨大テーマパークのようなもんです。

そんなパリも特にこの時期、10月から冬にかけてが、食通には最も楽しい季節です。ビストロやレストランの店先にはブルターニュ方面からやってきたであろう青いジャンパーに帽子をかぶった牡蠣やさんが店開き。もちろん日本料理店に行けば寿司や刺身も食べますが、フランス人がふだんの食生活で生で食べるのはタルタルステーキとこの牡蠣だけらしいんです。街のビストロでこの時期メニューを開くと必ず冒頭に生牡蠣 (les huitres) があり、それも“Fines de Claire N°1〜 N°4”、“Spéciale N°1〜 N°3”と、だいたい6〜7項目ならんでいます。「Fines de Claire」は身も味も薄く、「Spéciale」は身厚でミルクたっぷり、どちらも番号が若いほど身が大きいという表示で、これを6個単位で注文します。

私はきまって薄くて小さい「Fines de Claire N°4」を6個。あとでメインを食べることを考えると日本人の胃袋にはこれくらいで充分です。まず、テーブル中央に金属の台が置かれ、その上に店先の牡蠣屋さんが手早く開いてクラッシュアイスの上に並べた生牡蠣の銀皿がどんとのせられます。これにレモンをしぼったり、オニオン入りのワインビネガーをかけたりしてツルッ、ペロッと食べて白ワインをガブガブ。で、生牡蠣と一緒に必ず出される黒パンのスライスにバターをぶりぶりぬってかじって、また白ワインをガブガブ。ね、いいでしょう。これが前菜で、そのあとにメインとして鴨や羊やらの肉料理を食べながら、今度は赤ワインをグビグビ。ひやぁ〜、書いてるだけであの感触をぐいぐい思い出してきました。

で、この時期のもうひとつの醍醐味はなんつったって“ジビエ”(gibier)。たしかちょうど今の時期、猟が解禁になり、この季節にしか食べれない“撃たれたて”“捕まえられたて”の「猪」「野うさぎ」「野鴨」「キジ」などがレストランのメニューに並びます。お肉やさんの店頭でも、仔ヤギや野うさぎが天井からぶら下げられ、「うさぎ」なんかは、かならず心臓や肝臓が見えるようになっていて、それを見て鮮度を見きわめるんだそうです。日本でいうと魚の目玉で鮮度を見るようなものなのでしょう。

パリに行く前から料理に関してのフランス語は結構あたまに入っていたので、レストランのメニューを見れば、どんな料理かだいたいのイメージはできますし、あとはギャルソンさんに聞けばなんとかなりますが、このジビエの季節だけは別。ふだんのメニューでは見たことのない単語のオンパレードで、その食材の呼び名自体を知らない限り、ギャルソンさんに質問してもするだけ複雑になったりします。在仏日本人の友人とレストランに行ったときなどは、メニューを見て皆が煮詰まり出した頃に、隠し持っていた小型の辞書をふとテーブルに置き、「おぉ、さすがKANさん」と重宝がられたものでした。

そんなこんなであれこれいろんなものを食べましたが、一番印象に残っているのは「雷鳥= lagopède/ラゴペッド」ですかね。「雷鳥」つってもだいたいどんな形でどんな顔の鳥なのかもきっちりイメージできませんし、当然味の予想もまったくつかないんですが、トライしました。これが、やたら野生臭い味なのはいいんですが、シパシパでかたくてね、「いったいオレはなんのために何を・・」という不思議な感覚につつまれたりしてました。このジビエ、フランス人にとってはどうなんでしょうね。やっぱこの時期は、“真の肉の味がする肉が食える”歓迎するべき季節なんでしょうかね。よくわかりません。

まぁ、でもどう転んでも日本人ですから、ジビエに限らず普段食べてたフランス料理だって腹の底から“旨い!”と思えるか、つったらそうでもないんですよ、残念ながら。私の場合は料理が好きで、ワインが好きなので「ははぁ〜、こんな料理法があるのかぁ」とか「ほほぉ〜、こんな合わせ方もあるのね」とか「いやぁ〜、この盛り付けは素晴らしかぁ」などと、“頭でおいしいと感じる”ことは多くありましたが、それはきっと“おいしい”というよりは“おもしろい、楽しい”といったほうが適切で、日本でうどんやカツ丼や、ラーメンやカレーライスを食べる時のような“腹の底から旨い”という感覚ではありませんからね。

どうあれ食べること好きの私にとってはこの“ジビエの季節”、最も楽しい季節であることには間違いないわけで、言い換えるならレストランのテーマパーク“パリ”で、毎年恒例期間限定の大イベントが行われている季節、そう解釈すればやはりかなり楽しいものです。

そんなこんなの今週、東京・世田谷区のフレンチレストランで食べた「フレッシュフォアグラのソテー カボチャのクリームとポルト酒のソース」と「イベリコ豚のグリル スペイン産ソーセージのソース」は、ひさしぶりということもあり、たいへんおもしろく楽しかったです。

*     *     *     *     *

・・・というわけで今回はうまい終わり方が見つかりませんので、こんな時はなんの流れもなく『クイズでごまかせ!』です。

問題:この週末、私は今までやったことのないちょっと変わった仕事をします。
       その仕事とはいったいなんでしょうか。

  1.なぜか、ある外国語大学で特別講議をやる。
  2.なぜか、ある映画にちょい役で出る。その撮影。
  3.なぜか、あるアイドルの衣装をデザインする。その記者発表。

※答えは、コラム No.025 で。

2005/10/28


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