la RINASCENTE
【自主全曲解説】

01. Menuett für Frau Triendl
(新曲 / 2017)
2016年6月、初めて訪れたオーストリア・ウィーンの街の可憐さと上品さに歓喜し、長い間あたまの中にあった旋律をもとに書き下ろした弦楽四重奏のための小品。レコーディング時に、「この曲はウィーンなんです!」と強く話していたところ、ドイツに8年間暮した経験のあるCelloの奥泉くんから、ウィーンの3拍子は独特のリズムの取り方をする、という話がありました。具体的には、3拍子の2拍目をすこし前目に、そして3拍目をやや後ろ目に取る、と言うのです。ならば、と何度か試してみましたが、感覚的に身体の中にないもんでどうにもしっくりこず、いやしかし、できるだけウィーン式に近づけたいと思いから、出だしは日本式に通常の3拍子で始め、途中から微妙にウィーン式のリズムになる、という録音をしました。麗しのトリンドル玲奈さんに勝手に捧げます。
02. 世界でいちばん好きな人
(14th 遥かなるまわり道の向こうで / 2006)
初出音源のイントロはピアノの4分音符でシンプルなもので、弾き語りでのライブでは別イントロがありますが、今回は弦楽によるカノン風のイントロをつけてみました。曲中はオリジナルの雰囲気を充分に残したアレンジメント。2012年に東京・大阪のみで公演した【Concerto col Quartetto da Quano】の時は、弦楽四重奏の他に、オーボエが入っていたもんですから、基本は変えずに今回用にリライトしています。
03. CLOSE TO ME
(13th Gleam & Squeeze / 2001)
この曲以前の弦アレンジは、三声で作ったライン・ハーモニーの譜面をアレンジャーの小林信吾さんに渡して、弦編成に合わせて書き換えてもらっていましたが、この曲で初めて、自身で弦のスコアを書いて、自身でレコーディングを仕切った、そういう意味ではとても思い出深い曲。今回はギターの逆回転フレーズなども含めて4人だけで表現すること、そこにビート感を出すことは、かなりチャレンジングなことでしたが、敢えてやってみてよかったと思います。
04. いつもまじめに君のこと
(8th 弱い男の堅い意志 / 1993)
初出音源では、Paul McCartney作品に強い影響を受けたシンプルで優しいメロディを損なうことなく、ひねりのないアレンジメントですが、アルバム収録曲のバランスも考慮しながら、ここではちょっと無理をして、弦楽四重奏のみで組み立ててみました。
05. 月海
(11th TIGERSONGWRITER / 1998)
初出音源では、弦のフレーズをすべてシンセで録音したことに大きく後悔していたこともあり、今回最も収録したかった楽曲のひとつ。2本のバイオリンが上下入れ替わりながら表現する夜の海の静かな波、それが後半ややうねりをみせるあたりを注意深くお聴きいただきたい編曲。これも、2012年の【Concerto col Quartetto da Quano】の時のアレンジを若干手直ししています。
06. キリギリス
(14th 遥かなるまわり道の向こうで / 2006)
フランス在住時から5年かけて作曲し、歌詞では私の人生観を飄々と歌っています。初出音源での、ストリングス・生のオーボエ・ダモーレ・シンセでの金管楽器類が絡まるオーケストレーションを、弦楽四重奏で表現することはかなり困難だった気がします。2012年の【Concerto col Quartetto da Quano】では、弦楽四重奏+オーボエでのアレンジ。今回はそこから更に弦楽のみに絞り込んだ編曲です。
07. Here, There and Everywhere
(The Beatles / Revolver / 1966)
こういう企画ですから、なにかしらカバー曲をやりたいと思いましたが、やりたい曲なんてものすごく多くあるもんで、いろんな曲が頭を巡っていましたが、最終的には、発売日から逆算して編曲の締め切り日が決まった、その時点で頭の真ん中へんにあったのがこの曲だったのでそうしました。もともとオリジナル至上主義ですし、特にThe Beatles作品は完全コピーで演奏するべきだというのが私の基本精神ですが、弦のラインの流れ上、ほんの一部だけ、The Beatlesファンの方も気づくだろうかどうだろうか程度に、微妙にコードを変えています。
08. 愛は勝つ
(5th 野球選手が夢だった。 / 1990)
初出から26年、バンド・弾き語りともにライブでは微妙にアレンジメントを変えながら演奏し、また、フルオーケストラのアレンジメントを施したこともありますが、それらのちょうど真ん中をとった的な編曲になりました。このピアノのイントロを弾くのは、なぜかちょっぴりはじゅかちいです。
09. まゆみ
(7th TOKYOMAN / 1993)
初出音源のシンセでの弦とホルンのフレーズを、そのまま置き換えるイメージで編曲。これも、2012年の【Concerto col Quartetto da Quano】の時のアレンジを若干手直ししたものですが、今回の収録曲では最もすんなり編曲できたもののひとつです。
10. 彼女はきっとまた
(14th 遥かなるまわり道の向こうで / 2006)
初出音源では、バイオリンのソロ以外はすべてシンセによる“打ち込み”で構成した曲を、あえて弦楽四重奏のみでやってみることは、かなり無謀なチャレンジです。是非、初出音源と聴き比べていただきたい作品。2012年の【Concerto col Quartetto da Quano】の時のアレンジを若干手直ししています。
11. 星屑の帰り道
(9th 東雲 / 1994)
元々はEric Claptonの『Tears in Heaven』や、それに影響されたと思われるRichard Marxの『Now and Forever』をイメージして作った、アコースティックギターの楽曲。アルバム全体のバランスを考慮して、また、ビオラやチェロの音域をたっぷり使って弾いてほしい、という思いもあり、ピアノ・ビオラ・チェロの3人編成でアレンジしてみました。
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