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Friday Column

No.392

『それじゃ、あなたは25歳です。』

そう言うと意外だと言われますが、私は、本というものを全くと言っていいほど読みません。全く読んだことがないと言えばウソになりますが、完読した本と言えば、まぁ、これまでの人生でほんの数冊ではないかと思います。なんとなくおぼえているのは、江川卓さんの『たかが江川、されど江川』と、田崎真也さんの自伝的なものくらい。それから、泉麻人さんのコラム集と、原田宗典さんのそのようなもの。これらはどちらも未完読のまま、飛行機のシートポケットに置き忘れて来たような気がします。・・・くらいですかね。

1990年の6月、大阪のカラオケ屋さんで、森高千里の振り付けでチェッカーズの曲を歌っている時に、右ひざの靭帯と半月板を損傷して、手術・入院した時、せっかくだから普段やらないことをやろう、そうだ本を読もう、と思い、当時話題だった『ノルウェーの森』という本を上下巻買って来てもらい、読んでみましたが、どうも活字に集中するのは、よほどの興味がない限り、頭が痛くなるか、眠たくなるかで、これ必死で読むよりも、絵描いてたほうが楽しいなぁ、と思い、上巻すら完読できずに、入院中は絵ばっかり描いてました。

そんな私ですから、目を通して脳に入った文字よりも、この金コラのように自分から外に出した文字量の方が圧倒的に多いのです。去年秋に引越して、やっとこさなんとか片付いてきました私の部屋にもちろん本はあんまりありません。が、語学が趣味のひとつなので、辞書類は結構あります。



下段右から、ロシア語・イタリア語・フランス語・中国語・英語・スペイン語・ドイツ語などの外国語の辞書。上段は右から、広辞苑・国語辞典・漢和辞典、その隣の薄めの数冊は、ベトナム語・トルコ語・ペルシア語・ハングル語・北京語・広東語・上海語の会話集シリーズ。あとは、ワイン辞典と北京語・イタリア語・ロシア語の文法書に、クラシック音楽作品名辞典。世界の国旗かるた、北京語で世界各国の情報が記載された国旗トランプなんかもありながら、上段左の数十冊は、私の料理コラムが掲載されている【LuckyRaccoon】全巻。どうですか、なかなかステキでしょう。

ちなみに、左の棚に飾ってあるのはトルクメニスタンの本。濃緑のスーツの男性は、ベルディムハメドフ大統領です。2009年に訪れた時、ガイドのイゴルくんがプレゼントしてくれました。読んでませんけど。

そんななか今回、ぜひ皆さんに見ていただきたいのは【ペルシア語(イラン)文法と会話】。



同じ出版社の他の6言語とともに、10数年前に愛妻が古本屋さんで見つけてきてくれたものです。前半は、基本的な発音と文法がごくごく簡単に書かれ、後半はひたすら会話例です。この会話の例文がなかなか、いや、すごくエキセントリックで興味深いので、いくつかピックアップして、これまでの人生では考える機会がなかったペルシア語・イランについて考えてみることにします。

まずはこのあたりからどうでしょう。


「クムのモスクは美しいが、しかしテヘランの新築はもっと良い。」
「その通りですが、外国人はいつも古い建物の方を見ます。」

“クム”とはイラン中西部の都市。この会話からは、外国人観光客とイラン人との価値観の違いがうかがいとれますし、また、会話する両者が微妙に対立しているようにも解釈できます。

では、次です。


「世界中の国の大使たちが出席しておりました。」
「今日はフセイン殺害記念日です。」

イスラム教の宗派や民族間の問題に関してはほとんど無知な私ですが、イランにとって、近年敵国であったイラクのサダーム・フセイン元大統領の命日は、やはり“殺害記念日”なのでしょうか。それとも、これはこの本の著者である戸部実之氏による解釈のひとつなのでしょうか。また、「フセイン」=「サダーム・フセイン・アブドゥル」と断定すること自体が安直なのでしょうか。いやしかし、世界中の大使たちが出席するのですから、やはりそうなのでしょうか。

書いててわかんなくなってきたので、次。


「これは何ですか?」
「何でもない。」
「何事ですか?」
「これは何ですか?」

この会話はそうとう哲学的ですよ。私もこれまでに、英・中・伊・仏・露と外国語をかじってきてますが、どの言語でもその学習初期段階で必ず出てくる「これは何ですか?」という問いに対して、「何でもない。」という答えは初めてのことです。

第1者の「これは何ですか?」に対して、「何でもない。」と答える第2者との緊迫したやりとりを見た第3者が、「何事ですか?」と仲に入ったのでしょう。だとすると、その後あたらめての「これは何ですか?」は、これら3者のうち、誰が誰に投げかけた問いなのでしょうか。それとも第4者が割り込んで来たのでしょうか。う〜ん、フィロソフィーク。

では、最後にもうひとつ。


「あなたは、いつ生まれましたか?」
「よくわかりませんが、証明書には1294年と書いてあります。」
「それじゃ、あなたは25歳です。」

いやぁぁぁ、もう、この例文は、どうでしょう。
“平成”“昭和”など日本独自の年号があるように、イランには“イラン暦”または“ペルシア暦”なるものがあるのだということを、私は今回初めて知りました。そりゃそうですね、西暦はあくまでキリスト教の考え方ですから。イスラム教にはイスラム教の暦があって当然です。調べてみると、イラン暦の紀元は、西暦では622年ということですから、この例文の1294年がイラン暦だとすると、西暦では1916年ということになり、その年に生まれた人が25歳だということは、この例文の想定は、イラン暦の1319年、西暦では1941年だと考えられます。

ここに登場する人物が生まれたとされる西暦1916年は第一次世界大戦中。イギリス軍・ロシア軍に占領されながらも中立を維持したイラン、その時代に生まれた人が自分の出生年を認識していないことは充分に考えられます。と同時に、その人が後に取得したと思われる、なんらかの“証明書”に記された自身の出生年をうのみにしているわけではない。ということもこの例文から想像できます。そして、「それじゃ、あなたは25歳です。」と他者が断言していることから、1294年生まれと書かれたその人は、この会話が行われている“現在”がイラン暦何年なのかを把握していないのか、または、“現在”は1319年だと把握はしていても、計算ができないのではないか、ということも否定はできません。

いやぁぁぁ、なんかわかんないけど、勉強になったなぁ〜。

ペルシア語、そしてイランという国に、えも言われぬ憧れめいたものが仄かに芽生えてきたような気がしてます。

はい、という感じで今週はここまで。【弾き語りばったり #17 もしもヒアノがぴけたなら】、釧路・松原公演を観に来ていただけた皆さま、ありがとうございました。そして今日はついに最終公演。実に20年ぶりの旭川です。最後まで気を抜くことなく、いいカタチでの終演を迎えたいと思います。

ところで、関係ないですけど、先日の成人の日。数年前のコラム No.119に登場した甥っ子の光太郎さんが気がつきゃ成人式だったので、焼肉を食べに行きました。で、大学生になって運転免許も取ったってことだったので、ぽーんと1台、【ポルシェ 911】を買ってあげましたよ。それもキャッシュでね。はっはっはっはっ。


それじゃ、あなたは20歳です。

2013/01/25



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