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Friday Column

No.161

『質屋のエレキ』

先日、下北沢の裏路地を車で走っていたら、ふと質屋さんのショーウィンドウにエレキギターを発見、つい車を停めて写真を撮りました。

もうプロのミュージシャンとして21年もやらせてもらってるわけで、エレキギターも何本も持ってますし、これからだって買う気になりゃホイホイ買える45歳の私が、なぜ今エレキギター、それも“質屋のエレキ”に反応してしまったかには訳があります。はい、それは中学生の時の話です。

中学生になって『ザ・ビートルズ』を聴き始め、ギターを持って自然にコピーするようになって友人・山城辰也と『ザ・ミートルズ』を結成するのは1976年頃です。そのころ持っていたのは昔から家にあったガットギター1本だけだったもんですから、ビートルズをやる以上は当然エレキギターがほしいわけで、しかし70年代の福岡の中学生(=福岡では“ちゅうがくしぇい”と発音する)が買おうと思って買えるものではありません。それでいつも天神のベスト電器の楽器売り場に行ってはショウケースの中に吊るされた【Fender】やら【Gibson】やらの高級エレキを見てハァハァ言ってたものでした。そんな中ビートルズファンにとっての第一憧れギターはジョン・レノンが使っていた【Rickenbacker 325】。これが22万、いや28万円だったか、そんな値段ですから、中学生にはどう考えてもアウトオブ購入可能範囲です。「大人になったら、片っ端から全部買い占めてやる」と心に誓いながら、比較的現実的な棚に並ぶ【Greco】や【Westminster】などのエレキを触りながら、それでもハァハァ言ってたものでした。現実的と言っても最も安いもので2万円。やっぱこのくらいのがほしいよなぁと思えるものは6万とか7万とかしますから、中学生にはおばぁちゃんのお年玉以外にもなんらかの突発的高額収入がないことには手が出る価格ではありません。そこで、そんな70年代の福岡の中学生(ちゅうがくしぇい)にとって最も現実味のある存在が“質屋のエレキ”だったのです。

六本松という町にあった質屋さんのショウウィンドウにぶら下げてあったエレキギター、メーカーはどこだったか思い出せませんが、茶系のサンバーストのストラトでした。値段はたしか6,500円。これなら次のお正月に東京に行った時に必ずもらえるであろうおばぁちゃんからのお年玉で購入可能です。しかしそこで、どうみても中古品であることには間違いない“質屋のショウウィンドウにぶら下げられたエレキ”とはいったい何のか、という根本的な疑念をクリアにしなければなりません。だって同じショウウィンドウの中に腕時計もあるしカバンもあるし【サンダーバード】の1号から5号までがすべてセットできる“秘密基地”のプラモデルもあります。そもそも当時の私にとっては 「ってゆうか質屋ってなんなんだ」ってことです。

ザ・ミートルズのメンバーとして同じようにエレキ購入手段を模索している山城に「質屋ってなんや?」と聞くと、「金ば借りるとこやろうもん」と言うので、「そこになんでエレキがあるとや?」と聞くと、「金ば借りたっちゃろうもん」ということでした。ふぅぅん、なんかわかったようでよくわからんけどさっぱりわからんわけではない。どうあれこの“質屋のエレキ”6,500円がその時の私にとって最も現実的に購入可能な存在であることは間違いありませんから、その質屋さんの前を通る度に、「よし、まだある」と誰かに買われちゃってないことを確認していました。

で翌年、東京のあばぁちゃんのお年玉と、また別の親戚からの高額お年玉もあったんでしょうか、予定外の収入により“質屋のエレキ”に甘んずることなく、晴れてベスト電器で今なお謎のメーカー【John Bennet】のテレキャスターモデルを2万円で購入します。山城は中古エレキを細かく探し歩いていたようで、同じ六本松のなんでもありの中古屋さんで、ベンチャーズなんかが使っていた“モズライト”というモデルを買ってきます。「いくらやった?」と聞くと、その買い方がすごいんです。“モズライト”についていた値札は9,600円。スゴく欲しそうな顔をして「でも、ちょっと足りない」と店主に告げると、「いくらなら持っとうと?」と聞かれ、「9,000円なら」と言ったら、「じゃぁ、9,000円でよかよ」と言われ、「ホントですか、ありがとうございます」と言って一万円札を出して1000円おつりをもらってきたんですよ。山城、スゴイやつです。そしてベースの小野直樹には、博多駅近くの質屋さんで山城が探してきた“SG”モデルのベース・1万円を半ば無理矢理買わせ、これでミートルズはエレキ化完了です。

もちろんアンプなんて買えませんよ。しかしこの山城ってのがさらにスゴいやつで、電気系にめちゃくちゃ長けていて、エレキ2本とベースをまとめてつっこめる小さい箱を自分で作って家のエレクトーンに差し込んでアンプ代わりにしてました。おまけに私のガットギターにもイヤホン型マイクを仕込んでエレガットにしてくれました。去年暮れ久々に山城と飲みましたが、すでにどっかの社長でした。ドラムはドラムでスゴいですよ。タッパーウェアや洗剤のポリ容器、キャンディ缶のフタ、Zライトのスプリングなどを組み合わせて、私が作りました。かくしてザ・ミートルズはビートルスの曲ばかり、マイクを2本立ててラジカセで録音してました。

そんな時代があったもんで“質屋のエレキ”につい反応してしまったわけです。



しかしこの下北沢の質屋さん、写真を良く見てみると左の黒いギターは【Gibson 135】、私も色違いを持ってますが、これが65,000円。へんなカバンと一緒に吊ってある右のギターは浜田省吾さんをイメージさせる【Fender Telecaster】、これ50,000円です。質屋さんとは思えない高級エレキが並んでます。しかも下のほうにあるのはプロ仕様のインターフェイス【Digidesign 002】120,000円。これが質屋さんにあるってこと自体なんかすごいです。写真には写ってませんが、入口の右側にもエレキが3本たてかけてありました。ね、すごい質屋さんでしょう。実はここの店主が下北沢では知らないやつはいないというベテランミュージシャンで、金に困った下北のミュージシャンはみな楽器を担保に借金をしにくる、そんな感じなんでしょうか、イメージですけど。どうあれマジな音楽質屋です。どんな機材もしつこく使い続ける私が唯一、デビュー当時としては巨額の48万円を投じて購入したはいいが、ほとんど使うことなく倉庫に眠らせているバカでかいシーケンサー【YAMAHA QX-1】でも持ってって、それがこのウィンドウに並んでたらかなりツーですよ。ところで、いくらくらい貸してくれるんですかね。

はい、そんなこんなで大阪公演2デイズ、終了しました。観に来てくださったみなさま、ありがとうございました。どうだったんでしょうかね。土曜は京都、日曜日は神戸です。よろしくお願いスマッシュ!

2008/06/13



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