twitter
Membership ID

PIN code
SSL(https)接続
ログイン方法について

Friday Column

No.134

『そんな私の星体験』

いやぁ、それにしても、なんかひどい忙しさですよ。11月19日に富士の裾野でゴルフをやった日以外11月は休んでませんし、このあとも年末までやらねばならないことがビッシリです。「そんなの普通だよ」と言いたい方も多くいらっしゃることとは思いますが、私にすりゃこのふた月で半年分働いてる感じです。私の場合はどうもこの忙しすぎる=休む暇がない状態に、つい恐怖感とか危機感みたいなものを感じてしまうんですが、よぉく考えたらとってもありがたいことだということは頭ではわかりますから、どうにかして全部キッチリやって「いやぁさすがKANさん、職人っすねぇ」「まぁ、一応ね、オトナですから」な〜んて言いながらお正月はスパッと国外へ逃亡という、そんなイメージで丁寧にがんばってます。

それから例の【安倍なつみ&矢島舞美(ºC-ute)】のデュエットソング“どっちがA面”投票企画は終了し、アップテンポの『16歳の恋なんて』がA面に決定したようです。「ま、やっぱそっちだよね」という感じでしょうか。作者としては、どっちかっつ〜と長〜い目で見て『私の恋人なのに』のほうを期待してたりもしたんですが、まぁボツになったわけではなく、CDを買って聴いて下さるというアグレッシブな方々にはどちらもお聴き頂けるわけですから、いいんですよ。投票していただいた皆さま、ありがとうございました。

で、ここから先は思えば先週からのツヅキモノのような気がします。先週のコラムをお読みいただいてないものの結構時間はあるよというラグジュアリィな方は、コラムNO.133 からの流れでこれをお読みいただくというのがいいかもしれません。・・・で、先週はどこまで書いたんでしたっけ、そう、東京のレストランはレベル高いっすよ、もちろんですよ。という話でした。パリでの私のピアノの先生、マークアンドレさんが日本に行って戻ってきた時も「信じられない、マーベラス!エクセレント!それなのに高くない!ミラクルだ!」としきりに感嘆していたものでした。で、大人気でどこの書店も入荷待ちの『ミシュランガイド 東京』は今週もまだ見れてないままで、私の経験からのあくまで個人的見解だけでなんの責任感もなく書きますので、皆さまも何の責任も感じずお読み流しください。

権威と影響力に満ちてしまった『ミシュランガイド』で“星”がつくということは、たいへんに素晴らしいということが知れ渡るわけで、それはそれでレストランにとって名誉であることは確かな気がしますが、しかし“星”ってのはつきゃついたでその後がいろいろたいへんらしい、という話を聞いたことがあります。『ミシュランガイド 東京』のウェブサイトを見る限りでは、“あくまで皿の上に盛られた料理そのもののみの評価”と書いてはありますが、実際どうなんでしょうか。例えば、“星つきならば間違いない”と予約したレストランに行ったとして、「確かに料理はおいしいものの、狭い店内にテーブルがギッシリなもんだから終始なんだか窮屈な感じで、また従業員は奥さんと若い男の子の2人だけだったんで、料理は遅いし、呼んでも来てくんないし、ちょっとガッカリだよなぁ・・」なんてことになったとしたらどうでしょう。それはその店がガッカリと同時に『ミシュランガイド』の信頼に関わってくる問題でもあります。ということから考えると、“あくまで皿の上に盛られた料理そのもののみの評価”であるとはあくまで建前で、実際には店舗面積に対する客席数の上限、また席数に対する従業員数の低限などが『ミシュランガイド』の評価委員会で定められているのではないか、と疑ってみたくなります。

実際、私が行ったことのある西欧諸国の星つきレストランは、どこもゆったりした空間で、まわりの会話やナイフ・フォークがお皿にあたる音が適度なBGMとなってイイ感じに食事を楽しめましたし、ちょっと従業員を呼びたいなと思った時には、声を発しなくてもス〜ッと静かに現れる、そんな上級のホスピタリティを感じました。おいしいんだけど窮屈だったとか、呼んでも呼んでも来てくんない、なんて星つきレストランは見たことも聞いたこともありません。やはり“皿の上に盛られた料理そのもののみの評価”というのは、どう考えても建前でしょう。料理以外にも星の基準が暗黙に定められていることは、私の中では明らかです。

このような高級店では、ワインは客からは直接手が届かない位置のワゴン上に置かれ、少なくなった頃にどこからともなくス〜ッとエレガントに注ぎ足されます。また、優れた従業員になると、こちらの料理の食べ進み具合とワインの飲み進み具合を経験と勘から察知するのか、料理はまだ残っているのにワインがなくなっちゃったよぉ、なんてことのないようにテンポ感を微調整してくれるステキな技術も持ち合わせているようです。

話が少し逸れますが、フランスのレストランでは、テーブル上にワインが置かれていても、基本的には従業員がつぐもので、客がワインのボトルを持って自らグラスに注ぐことなんてことは客にとっても店にとってもNGとされているようです。もちろんカジュアルなカフェやビストロではそうでない場合もありますが、そんなお店でも、自分でワインをつごうすると「おっと、すみませんムッシュー」と従業員がやってくるのが普通です。女性客が自分でボトルを持ってワインをつぐなんてことは、たとえカジュアルなお店であってもタブーで、それが星つきの高級店なら“最悪の事態”ということになりかねませんのでお気をつけ下さい。日本酒だったら女性にお酌してもらうほうがおいしいに決まってるんですけどね。

話を“星”に戻します。で、この“星”のやっかいなところは、“星”がつけば素晴らしい評価を得たということで一気に知名度もあがりますが、逆に、次の年にその“星”を維持できなかった場合、例えば去年2つ星だったレストランが今年の『ミシュランガイド』では1つ星になっていたとしたら、それはいわゆるひとつの“格下げ”で、「あの、店はダメになっちゃった」という解釈になってしまう危険性もはらんでいます。これは、困ったもんです。有志のレストランがミシュランコンテストに挑戦して勝ち抜いて星を獲得するわけではなく、“覆面調査員”なる人たちが断りなく食べ歩いて、勝手に評価して掲載するわけですから、店にとっちゃぁありがた迷惑にも充分なり得ます。

だとしたら、“星”がついちゃったレストランは、それを維持しないとヤバイということになるわけですからたいへんです。世界中からの食通が期待に胸を膨らませてやってくるパリの3つ星クラスは、その期待に応える最高級を常に提供し続けなければならないわけで、もう原価率がどうこうなんて考えてる場合じゃありません。アメリカ式の優れた商才を持ってうまいことビジネスを展開していかないことには、店舗単独ではどう考えても採算は合わないと言われています。

パリ時代よく日本人の友人とレストラン巡りをしていましたが、基本はムニュ(前菜・主菜・デザート)で30ユーロ(当時で約4,000円)以内でおいしい店を探すというのが共通のテーマだったもんですから、星つきのレストランなんてのは論外でした。だってなにしろ高いですから。1つ星クラスでもムニュは100ユーロ以上、2つ星だと150ユーロ以上、3つ星なんつったら250ユーロなんてことになり、またせっかくなのでそれ相当のワインをなんてやってたら、ひとりあたり400ユーロ、つまり5万円越えというたいへんな話になっちゃうもんですから、近隣諸国よりも高いとわかっているパリでは3つ星には行ったことがありません。いっくらなんでもねぇ。また、やっとみつけて気に入ったレストランに星なんかついちゃったりしたら、予約がとりにくくなるわ、高くなるわで、困りものです。友人との会話で「KANさん、あそこ星ついちゃいましたよ」「うそ!、あ〜あ、まいったなぁ」みたいなことも数回ありました。

かといって、星つきには行かない主義というわけではないんですよ。母親が来た時とか、ピアノの試験にパスしたとか、ホントに特別な時には行きました。パリでは2つ星に3回くらい、1つ星はスペインも含めて5〜6回くらい行ったと思います。基本的にはどこも期待を裏切りませんでした。そんな私の唯二の3つ星体験は2000年、イタリア・フィレンツェの『ENOTECA PINCHIORRI/エノテカ・ピンキオリ』と、2003年、ベルギー・ブリュクセルの『BRUNEAU/ブリュノー』。特に『BRUNEAU』は料理もサービスも素晴らしく、日本人のソムリエさんもいてワイン選びも細かく丁寧に説明を聞けました。ゆったりと食事を終えて店を出る時にはオーナーシェフのブリュノーさんが挨拶に出てきてくれて、カタコトフランス語の私を穏やかな笑顔で見送ってくれました。とてもいい思い出です。当地の『ギド・ミシュラン』では2004年に2つ星になったそうですが、そんなことは関係なく、次にブリュクセルに行ったら必ず訪れたいと思える素晴らしいレストランです。

写真は2003年、パリ8区にある Hotel Le Bristol Paris の『RESTAURANT D’ETE』、2つ星です。いろんな種類のパンをひとつひとつ説明してもらいながら、わかったようなフリをしてるところだと思います。その料理やサービスがどのくらい素晴らしいものだったかは、去年のアルバム『遥かなるまわり道の向こうで』のインナーブックレットに載っている私の表情でおわかりいただけると思います。


RESTAURANT D'ETE ☆☆

ところで、『ミシュランガイド』の“覆面調査員”ってのは、やっぱりその名のとおり覆面してレストランにやってくるんですかね。全身白いモコモコだったりしたら最高なんですけど。


2007/12/07

※コラムNo.132 クイズの答え:
   中段左の写真の右側の男性、下段右の写真の右側の男性が喜瀬ひろしさんです。

その理由:
番組名・パーソナリティ名表記に2回登場するのは喜瀬さんのみで、同じシャツで同じ角度のピースサインを出しているひとがそうだろうと思われるから。



≪ BACK Latest NEXT ≫

会社概要
サイトマップ
スタッフ一覧
個人情報保護
リンク
推奨環境
お問合せ

- Copyright(C)2023 UP-FRONT CREATE Co., Ltd. All Rights Reserved. -
sitemap