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Friday Column

No.095

『HOME』

よく“フランス人は討論好き”だと言われますが、私の経験でもたしかにその通りで、パリにいる時代は音楽について語らねばならない場面がよくありました。語学学校の友達やそのまた友人など日本人・フランス人を家に招いて食事したある晩、私が日本で何をやっているのかという話なり、“ロック”だと答えると、友人の彼氏(現在は御主人)クリストフはすかさず「ムッシュー、あなたにとってのロックとは何ですか?」と聞いてきます。私はそれに対して「ビートルズを聴いてバンドを組んでエレキギターを弾き、20歳を過ぎてからはビリー・ジョエルのスタイルでピアノを弾いて歌っています。ロックとは使う楽器や曲に関わらずあくまで精神的なスタンスなのです。そして私の場合、初めからこれまでそれはいつもロックンロールです。」というようなことを言うのが精一杯で、今こうして思い起こせば、クリストフの質問にする的を射た答えではなかったようですし、彼も例に漏れず討論好きのフランス人だったとしたら、私はなんとも物足りない日本人だったことでしょう。

「ロックというのは、支配的文化に逆方向からぶつかっていくカウンターカルチャーであり、若さ故の叫び=こんなこと永く続く訳ないじゃんとわかりきっているからこそ愛しい刹那主義であり、“死んでいく”という刹那を感じつつ“生きている”ことを認識するような音楽ではないか、という解釈だったんですが、しかし、戦争とか地球環境の問題とか、これだけ世界中が“死んでゆく”というムードに満ちている昨今に於いて、死に死をぶつけてももはやそれは対抗文化にはなり得ない、むしろ“永遠”とか“普遍”を歌っていくほうがカウンターカルチャーとしての“ロック”になり得るんじゃないか、と思ってきました。ロックとは音楽のジャンルではなく、あるひとつの“価値観”ではないかと・・・。」

先日『ロックボンソワ』のインタビュー収録でそう語ってくれたのは東京都の桜井和寿さん(37歳)です。まぁ、聞き手である私の解釈で文字化しているのでニュアンスの違いが多少あるとは思いますが、今、自分がやっているロックとはいったいなんなのか、そして今どんなロックをやるべきなのか、とそのようなことを真剣に考えているんだなぁ、と感心しますし、私も音楽に対して常にこのような姿勢でいれば、クリストフとももう少しくらいは討論になり得たのかもしれません。まぁ、“討論する”ためのフランス語力ってのも別の問題としてあるにはあるんですが。

さて、そんなMr.Childrenの最新アルバム『HOME』が3月14日に発売されます。私はすでに何度も聴かせていただきましたが、うぅぅ〜ん、まいったねぇ。作って歌ってる同業者の私の場合、どうしても曲・アレンジ・歌唱を含めた演奏側のほうから聴いてしまうもんですから、1曲1曲うなったりのけぞったりまいってしまったりこまってしまったりといろいろですが、全体の印象としてはたいへんにあたたかくやさしい作品です。この極めてありきたりな“あたたかい”とか“やさしい”という言葉をもってこれまでの既成概念的ロックを評論したとしたら、それはロックとしては明らかにパンチのないものたりないという表現になってしまうのですが、うぅぅ〜ん、これは違う。上に書いたとおり、このやさしい、あったかい感じこそが今、桜井くんが作りたかった楽曲であり、Mr.Childrenが出す音であり、そしてそれはまぎれもなく“ロック”である、という解釈にうなずけました。

概念ばかりではなんなので、収録曲についての私解釈の特筆事項をいくつか。■上に書いたことも含めていろんな意味でこのアルバムの中軸をなしているのではないかと思える『彩り』。詞曲の完成度の高さは群を抜いています。■『箒星』。サビのメロディがここまで複雑なポピュラーソングを私は知りませんし、それはすでにMr.Childrenのシングル曲のあるひとつの独自性として確立されているのではないかとも思えます。■私がこのアルバムで最も好きな曲のひとつは『Another Story』。「通過中〜〜♪」のとこがイイです。■『もっと』のサビの歌詞「どんな理不尽も〜〜」からの2行は、パリで私が40歳になったころに考えていた、ある意味では人生のテーマです。■『しるし』は07年のレコード大賞を獲るべき楽曲です。■上に書いたことも含めていろんな意味でこのアルバムを総括しているのではないかと思える『あんまり覚えてないや』。もし私がMr.Childrenの一員だったら、この『あんまり覚えてないや』をまんまアルバムタイトルにするべきだと主張して頑として引かずに小林武史さんとつかみ合いのケンカになったあげくうぇんうぇん泣いてるんじゃないか、とも思えるほど良い曲でした。

ジャケットもスゴク良いです。なにげに田原くんとかが入ってくれてたりしたら個人的にはもっと最高なんですが。そんなこんなでMr.Childrenの最新アルバム、是非お聴きいただくことを強くお勧めします。

ちなみに『HOME』という単語は、英語の「human」と同様、ラテン語の「homo=人間」から派生したものです。まわりにいくらでもあり得る人間の温かみを簡単には感じくくなっている、例えば東京に象徴されるデジタルな現代都市生活において、いま世に出されるこの『HOME』は確かにカウンターカルチャーなのだと再認します。

結局最後は例によってウンチク絡みのエンディングですが、でもまぁ、ウンチで和えられるよりはマシってことで良しとしていかないとこの金曜コラムは読めませんからね。では、私は練習してきますからね。今いちばん重要なのはそこですからね。

2007/03/09

気がつきゃリニューアルされていたMr.Childrenのオフィシャルサイト
http://www.mrchildren.jp/

桜井くんのインタビューはSTVラジオ『KANのロックボンソワ』で2007年3月17日(土)深夜に放送されます。
http://www.stv.ne.jp/radio/kan



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